ピーターとワンムの押し問答(not夢)
「貴方はもう一度『彼』と同じになりたいらしいけれども本気でそう考えているの?」
あまりに簡素な『船』の中で、ピーターは次の目的地の情報を集めていた。
私達は旅を始める。その先に彼が『彼』を目標としているなら、私の仕事はとても面倒な事になる。私は『彼』の心優しい天才の『妹』でも、優秀な戦士だった『彼』でも、妻だった『彼女』でもない。
私はシー・ワンムという、名前こそ大層だが、ただの女に過ぎないのだから。
「こんな事考えるのは本気と気狂いしかいないさ」
そう言う彼の顔は自虐的な笑みに包まれていた。はたして『彼』もこのような顔をしたのだろうか。
「貴方はピーター・ウィッギンであってピーター・ウィッギンではない。賢い貴方は理解している筈だ、貴方はエンダーから生まれた負の感情が形を成したに過ぎないわ」
そう言われてもその笑みを止めない。
「覇王だなんて馬鹿げているわ」
何千年も前に亡くなった男の人生の後追いなんて馬鹿げている。
「でも君はその馬鹿げた男の手を取った。僕の代わりに、僕の、いやこの世界の駒になって僕の偉業をその細い目をかっ開いて脳髄に記録するがいいさ」
ピーターは私に代弁者になって欲しいのだろうか?それともデスデモネスに?
「愚かね、貴方はピーターじゃないのよ。私は私だけれどもね、全て私が選んで歩いてきた」
その結果がどうであれ私は満足しているのだ、たとえ惑星パスに色々な物を置き去りにしようとも。
「僕だって違う事は理解しているさ、ちゃんとペトラ・アーカンシルではなく君を選んだだろ?新婚なんだからもう少し甘い空気で行くべきだ」
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