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「ねえ、ダニーを知らない?」

ジョースター家にも大分なれてきたある日、屋敷中を探しまわってもジョジョと私の親友は見つからなかった。

「申し訳ありませんお嬢様、私も今日は一度も見ておりませんので…」

いつの間にか、私にとって一番そばにいてくれるのはダニーになった。

ディオはこの屋敷に来てから外の世界に順応してきている、私の知らないお友達ができて、私の行かない学校へ行き、学び、たまに喧嘩して帰ってくる。

その世界に、やはり私はいない。

時々、思い出したかのように、以前と同じように接してくるけど、前と違って距離感を感じた。
お義父さんは、男の子だから仕方ないって言うけどわそういうものなんだろうか。ディオと一緒にいられる時間は、夜彼のベッドで一緒に寝る時だけ。

それに、最近は昔みたいにぎゅっと抱きしめてくれないのだ。私から抱きついたら慌てて押し返すし、手を握って眠ったはずなのに、朝になったらいつの間にか消えている。
どこに行ってるんだろう、私がぼんやり目を覚ます頃には、着替え終わったディオが本を片手に、すました顔して戻ってくるのだ。
もう、私みたいなチビのお守りは面倒なのかも。

それでも、少しでも一緒の時間が欲しくて、ディオの部屋に行くのをやめることができないでいた。
でも、前みたいに甘えてじゃれつくと、慌てて拒否される事が多くなって、さすがにショックで、日中は少しだけ距離を置くことにした。

(……結局、みんな離れていくのね)

ディオは向上心というか上昇指向が強い、求めるものが違うからどんなに離れるなと言われたって自然と距離ができていく。
最近じゃ、私なんかよりもジョジョといる事の方が多いのだ、今はこの家の一員になろうとディオが頑張っている最中だ。彼の邪魔はしたくない、だから今は私がやらなくちゃいけないことをしっかりやるだけだ。

いずれ、ディオがそうなるように、私だって、いつかこの屋敷を離れる時が来るだろう。その理由が仕事か、それとも結婚か、それはわからないけれど。

ディオのいない人生というのもちょっと寂しいが、彼と私は違うのだから仕方がない。だだ、私達が従兄妹だっただけの接点だ。

(それで、ディオが幸せなら問題ないわ)

こんな不毛なこと、ぐちぐち悩んでても仕方ない。今は忘れて、親友探しに集中しなきゃ。

―――――――――――――――――

庭中を探しまわったけれどダニーは見つからなかった。なんだかダニーにも離れて行かれてしまったような気分になって、今日の勉強の疲れが今になってどっと出てきた、もう部屋に帰ろう。

小走りに庭をまたいで玄関に向かう途中、今日の勉強で叱られたことを思い出して頭が痛くなってきた。ピアノの練習は頭も手先も使うので神経が磨り減ってしまう。

なんで私はディオみたいになんでも上手く出来ないんだろう、いや出来ないからディオと私の間に距離が出来るのだ。

落ち込みながら玄関まで戻ると、勝手口の方で使用人達が固まりざわついている。

「………うっ…うっ…!!」

人垣の向こうから聞こえる泣き声の主は姿が見えないけれど、この柔らかいキーはジョジョの声だ。

「何かあったの?」

一番近くにいた使用人の裾を引いてたずねると、みんな今まで私に気付かなかったのか一斉に私に振り向いた。

「……お嬢様!!」

その空気は異様だ、ここに私は居てはいけないというような、恐れを含んだ使用人達の目が私を囲む。まるで私がいけないことをしているような、そんな気持ちになってしまうような雰囲気だ。

「ナタリアお嬢様、今日はもうお疲れでしょう?中で御休みください、今お茶を用意いたしますから…」
「でもジョジョが…」
「後から参りますから…」

私はそこにいるはずのジョジョを一目も見られずに、使用人達に抱えられ屋敷の中に押し込められてしまった。

ただその場に充満していた、肉が中途半端に焦げたような匂いが不快による疲れを加速させていった。
あそこに火なんて何も無かったのに、だだ、見慣れない棒が地面に刺さっていただけなのに。




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