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「……もうすぐお葬式終わるね」
「ああ」
「夕御飯の準備何もしてない、何か買って帰ろうか」
「帰る?」
ディオは鼻先を鳴らして笑った。いつもの、私に馬鹿だなあって笑う時みたいに。こんな時なのに、その少し陰のさした横顔がいつもみたいに格好良くてドキリとする。
「あんな家、もう戻らないぜ」
「もうあの家には戻らないって……じゃあ私達はどこへ行くの?」

叔父さんのお葬式を身内だけで簡素に済まし共同墓地に葬むると、馬車が待っていてディオに押し込まれた。
馬車の中には私とディオの荷物の入ったトランクが放り込まれており、家はもうとっくに引き払ったとディオが言う。

「親父の古い知人にジョースターとかいう貴族様がいてな、なんとお優しい事に恩人の息子である俺を引きとって育てたいんだと」

馬車は夕闇に包まれていくロンドンの町中を駆け抜けていく、行き先を誰も告げないのでどこへ行くかもわからない。

「叔父さんの知り合いなら私は関係無いよね、やっぱり修道院か孤児院に入……」

最後まで言おうとすると、向かいに座っていたディオから長い足が伸び、私の顔の真横に叩きつけられた。

「……ひっ!!」
「黙れナタリア、お前は俺と一緒に行動するんだ」

馭者から馬車の中を心配する声がかけられたが、ディオは人当たりのよい丁寧なこたえで何でもないと伝える。
このディオの二面性に未だに慣れない。普段の彼は優しいのに、突然激しく詰ってくる。それは大抵私が勝手な行動を取るときで、私はいつだってディオの支配下にいるような心地だ。

それでもいいよ、だって私、ディオの隣がいいもん。
ちょっとでも必要としてくれるなら、その間は一緒にいたい。

(だから、そんな事しなくても離れないのに)

なにも言わなくなった私に満足したディオは、馬車の座席に座りなおし窓を見つめた。私も目を向けると馬車はホテルの車寄せに入っていく、どうやら今日はここで休むようだ。

身なりが良くないせいか裏口から入れられた私達は、部屋に通された後、用意されたお仕着せに着替えさせられる。オーダー物よりは劣るが、下町の子供は絶対に着られないような上等なものだった。布の手触りが全然違う。

「ディオは良く似合うね、お伽話の王子様みたい」
「当たり前だ」

こんなことどうでもないといった感じで、後から部屋に運ばれてきた夕飯を口にするディオはどこからどう見ても貴族の子息にしか見えない。

(これから私達どうなるんだろう、ジョースターさんがいい人だといいな)

私といえば不安で落ち着かなくて、久しぶりの美味しい夕飯を半分も残してしまった。




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