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「ディオ、ねえディオってば!!」
木漏れ日のさす庭のベンチは、午後の読書にはもってこいだ。
でも絵本を読むのもあきてしまった私は、隣に座る従兄弟にちょっかいをかけることにしたのだけれど、何度呼んだって本から顔をあげてくれない。
彼は何時だって、私に意地悪。
私の七つ程年上の従兄弟、ディオ・ブランドー。
賢く、強く、美しいその少年は私の一番の友達でもある。
というか、私はこの屋敷から出た事が無いからディオ以外の子供に会った事が無いのだ。友達を増やしたり、比べたりすることなんてできる訳ない。
この世の気まぐれな神様は、気まぐれなのか天に二物を与える事もあるのだろう。強い光のこもった赤茶色の瞳と輝く金髪は何度眺めても飽きる事のない美しさだ。
私が生まれてきてから見たものの中で一番綺麗。
ディオが抱えている本ごしにじっと顔を眺めていると顔がだんだん熱くなってきた。おかしいな、このベンチは庭の日陰にあるはずなのに。
「ナタリア今いい所なんだ、もう少し待て」
ディオはそう言いながら、本をめくっていた方の手を私の頭に回し、自分の膝に押しつけた。わあ、膝枕状態だ。
眠らせて黙らせようっていう魂胆なのだろうけど、今日はそうはいかないぞ。
ディオの邪魔をしてやるんだから。
最初はそう意気込んでいたのだけれど、ディオが日陰を求めてベンチにやって来た猫を私のお腹の上に乗せてしまうと、体温の心地よい温かさに誘われてだんだん眠くなってきた。
(…ディオの手も猫もあったかくて気持ちいい)
結局眠ってしまって、ディオに何も出来ないまま、その日のお昼は過ぎていった。
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