朝食を食べ終え訓練場に向かおうとする私をエルヴィン団長に呼び止められた。

「復帰一日目はどうだった、ナナ?」

エルヴィン団長は優しい、昔から父親にくっついて調査兵団に出入りしていた私に話しかけてくれていたし、入団の時や初めての壁外調査の時も色々と気にかけてくれた。
年の離れた兄のような心地よい関係にあると一方的に思っている。そのエルヴィン団長にわざわざ呼ばれて復帰したからには、彼の顔に泥は塗りたくない。昨日は散々だったけれど今日は頑張らなくちゃ。

「リヴァイ兵長とうまくやっていけるか心配です、適性試験も最悪でしたし…私、調査兵団にせっかく誘ってもらったけれどご期待にそえないかもしれません。でも!力及ばずながら私の出来るだけの…」
「無理してほしくて君を呼び戻した訳じゃない、私の都合で無理矢理調査兵団に戻してしまったんだ。それにリヴァイは取っつきにくいが君のいい上司になると思うよ、あまり背負わず君のしたいようにするといい」

エルヴィン団長は私の言葉を遮り、頭をなでてきた。こういう事をされると子供扱いされているみたいで本当は嫌なんだけれど、エルヴィン団長なら嫌な気持ちはしない。むしろもっと撫でて欲しくてにやついた笑いを浮かべてしまった、戻ってきて良かったな。

この時は気づかなかったけれど、リヴァイ兵長はこの場面を見ていたらしい。


実戦訓練はリヴァイ兵長とペアを組み森の中で巨人に見立てた仕掛けを討伐していき、連携を確認するというものだった。

「ナナ、次の二体を補佐しろ」

兵長の指示通りに動いて補佐、巨人に見立てたトラップの前に出て囮になったり、動きを封じるために足の腱や関節等の筋部分を削いで兵長が首にトドメを刺す。それを繰り返す訓練だ。

リヴァイ兵長は昨日聞いた噂通りの動きで敵を瞬く間に仕留めていく。的確に的の首筋を削ぐうえ、二体同時に仕留めたり、ひと飛びで次の的に狙いをつけたり、神業だ。

出来るだけ速く補佐をするのだけれど、すぐトドメを刺されてしまい私の手が休む暇がない。追い付かれて、目付きの悪い顔から無言の圧力を感じる気がする。
昔話の妖怪みたいに、切っても切ってもすぐ横にやって来てじっと見つめられガンつけられた。

(こわいこわいこわいこわい!!)

猫に追いかけられる鼠の気持ちが良くわかった。



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