校長室の秘密O


「絶対に逃げ切ってやる」と心の中で思ったならッ!
その時スデに行動は終わっているんだッ!


心持ち一つでスネーク出来るなんて思っていた過去を反省し、今度は行動と覚悟を重視したスローガンの下でスネークしてました。えぇ、流石は奇妙な冒険の三大兄貴と呼ばれるギャングですわ。難易度ルナティック無事クリアしましたよ。途中で銃声のような音が聞こえたけど、獄卒に見つかったわけじゃないよ、きっと、多分…少し急ごう。そんなこんなで校長室なう。

「校長室なら鍵とか、キーアイテムとかあるだろうし、運が良ければバールのような物…いや、精々ネイルハンマーならあるだろ。」

一応鍵はかけたが、古びた扉はノックしてもしもし(物理)一回で吹っ飛びそうな程頼り無い。早々に探索を進めるべきだろと校長の机を開き始めて数分。

「…。」

とりあえず見つけたものを机に並べてはいるが碌な物が見つからない。ささくれだった木のデスクの上には布面積の小さな水着を着た女性の写真集、縄、懐中電灯、ファイル。あと棚の中に金具があったが、ソレは未だ触ってすらいない。

「それよりも、なんでグラビア?」

机の上で一際異彩を放つ写真集に自然と顔が引き攣る。この学校が潰れた理由、絶対校長の汚職とかそんな物だと思うの。懐中電灯はまだ使えるようなので持って行くが、問題は縄とファイルだ。縄だけがあったのなら不審に思う程度だが、これと一緒に入ってたのはグラビア。もう一度言おう、グラビアだ。いや、年齢指定の本じゃないだけましなのか?混乱してきた。

「え、えぇぇぇ…これ持ってくべきなの?」

もう一度縄を見る。いたって普通の麻縄だ。呪いのアイテムでは無さそうだが…嫌悪感がぬぐえない。…未使用ですよね?

「…一応持ってくべきか。」

嫌々ながらバックに使えそうなものをしまって、棚の方を向く。グラビアはゴミ箱へボッシュ―トしました。職場で読むなよ、お年頃な男子生徒じゃないんだから。

「さて、どうするかな…。」

私の手がギリギリ届く位の高さの位置に置かれた金具は、それほど明るくない室内でもピカピカと光っている。何これ、発光する機能でも付いてんの?どんだけ自己主張激しいのさ。正直な所、触りたくないし、取りたくない。
知らん人の記憶が流れてくるのって結構な衝撃とストレスなのだ。これが感動的な内容(BGM:I will always l○ve y○u)だったり、名作(BGM:もの○け姫)だったらまだ良かった。傷は浅いし、感涙してたかもしれない。なのに一方的に脳内に流されるのは、教育番組で使われるようなシーン『イジメ駄目絶対』。クラスで鑑賞してた時は皆速攻で寝てたぞ。セリフが鼾でかき消され、笑いをこらえるだけの時間だった。大きなため息を吐き、腹を括って金具へと手を伸ばす。本当は触りたくないんです、今すぐ出口にBダッシュしたいんです。でもこれを獄卒が拾って、手がかりにするんだと思うとそれはもっと嫌なんです。おのれ獄卒(斬島さんを除く)貴様らの詳細を腐ってる子に横流ししてやる。夏の聖展は覚悟しとけ。

チャリッ
金具のこすれる音と共に視界が見慣れた砂嵐にジャックされる
ザザッ…


うるさい。
バカな子。
なんど言っても分からないなんて、いい加減にしてよグズ。
育ててやってるのに、誰に似たのかしら。


ああ…どうして生まれてしまったの?出来損ないの私


………超重い。
いじめの現場映像だけでも十二分にお腹いっぱいなのに、虐待とか何なの?私の良心がマジで限界なんだけど。そりゃこんな環境にいたら、マキちゃんだってグレるわ。盗んだバイクで夜の街へ走り出したりもしたくなるよ。結果が怨霊になるっていうのは斜め上すぎたけど。
『怨霊!ならずにはいられないっ!』こういう事ですか?この世も末だな。
拾った金具をしまい、さて部屋を出るかという時だった。

ギシッ、ギシッ…
隣の部屋の方から床の軋む音。あっ、これはヤバい。校長室は出入り口が二か所しかない。しかも隠れられそうな場所と言ったら、机の下か棚の下段という分かりやすいにもほどがある二か所のみ。必然的に向かうのは入口とは別の扉。音を立てないように注意を払いながら開けた隙間、そこに滑り込むように入ると即座に鍵をかけた。息を殺して数秒

ガチャ…ギィィィ…

「…?先ほどまで鍵がかかっていたはずだが…。」

ドア越しに聞こえる声は獄卒のものだが、S県月宮でもカニバリズム野郎でもダグライフィリアでもない。あのビックリ性癖サーカス軍団の中で唯一!まともな!斬島さんじゃないですかー!もうダメだ私、かなり疲れてるわ。テンションが安定しない。
いっそここで飛び出して行って、斬島さんに保護されるべきか…?

バタバタバタ…
ガチャッ!ギィッ!!

床板を踏み抜くのではと思われるほどの大きな足音。勢いよく開かれたせいで悲鳴を上げるドア。

「あ!斬島!」

聞こえたのは声だけだが、十分誰だか分かった。

「なんだ?」
「なんだじゃねぇよ!イキナリ喧嘩ふっかけてきたのオマエだろ!」

カニバリズム野郎基、獄卒の平腹だ。


「???なぜ俺が。」
「しらばっくれんなよ!それオレが聞きたいし!」
「分からん。俺は仕事しかしてないぞ。寝ぼけたのか?」
「えー!?なんなの!?オレちゃんと起きてんだけど!?でも斬島ウソつかないもんなー、バカ正直だもんなー。じゃあアレは何?おもしろいこと始まるの?」
「なんの話ださっきから。」
「ちょっと探してくるわ!」

嵐のようだった(小並感)とにかくカニバ野郎が近くにいるだろう間は出ていかないほうが賢明だろう。境ちゃんが獄卒を攪乱してくれているみたいなので、その間に私はさっさと出口を見つけなければ。
改めて自分の置かれた状況を把握した時、

ガチャッ

顔の隣にあったドアノブが動いた。

「こっちの部屋は…鍵がかかっているのか。」

鍵かけといて正解だった―!!心臓の音が聞こえてしまうのではないだろうかという程早く、大きくなる。無理に鍵を開けようとはせず、そのまま校長室から出ていく足音。扉の閉まる音がしてからようやく安堵のため息をつく。
ば、バレるかと思った…。
心臓のあたりを抑えながら扉を開く。

「………え?」

一歩踏み出した先、足が着地するはずの床板はそこになく。校長室だった場所は、天井や床の概念もない暗闇に占領されていた。

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