斯くして語らんO


この記録はこの私―――向日葵という存在が人間でありながら、人外である彼らとの交流を深めたことの決定的且つ明白な記録である。

とはいえ何から綴ればいいのか全くもって悩ましいところなのだが、とりあえずは相棒兼愛猫である彼女の紹介から始めようと思う



日本人の多くがペットとして共に生活をする動物
自由気ままの象徴。
人間が支配者のように図々しくも名称を定め、まるで奴隷のように甲斐甲斐しく世話をする相手。
そして、長く生きた猫は化け猫になるという伝説。

猫にまつわるオカルトなエピソードは非常に多い。
曰く、猫は9つの命をもつ
曰く、20年生きた猫は化け猫となる
日本各地にも化け猫によって騒動が起こされ、祟り殺されたという話が多く残っている。
一体何がいいたいのか?

要するにだ、
我が家の猫は彼女がそうなるのに十分な年月を生きたらしい。
少なくとも私が生まれた時に姉として私の相手をしてくれた彼女の尾は既に2つに分かれていた。
赤ん坊がまさか化け猫の存在など知るわけがない上私の両親は少々、現実的過ぎた故に彼女の尾が二股だなんて事はさして重要な事として話題に上がることもなかった。
我が家の化け猫殿は新たな家族となった妹である私をそれこそ猫可愛がりし、様々な事を教えてくれた。
その結果として少々厄介な事件にまきこまれる結果となってしまったのだが、それは致し方ないことだったとしか言いようがない。これは不本意ながらも必然だったのだろうから。

ともかく、理解してほしいのは人外たる世界に生きる猫が人間の世界に生きるべき私の姉であり愛猫であると同時に相棒であるという事だ。

『猫とは自由に生きるものよ向日葵、あまり迷惑をかけないで頂戴。』

あと彼女が大概の猫がそうであるように、とても自由気ままであることも。


閑 話 休 題。それはおいといて
ついでとばかりに、少々お恥ずかしいが我が家の化け猫殿の妹である私について少し自己紹介をさせえていただきたい。

姓はこの記録の中で記す必要は今のところないので、まぁ省略させていただこう。
名は向日葵。性別は至ってどこにでもいる女だ。
強いて違う部分を挙げるとするならば、と続けられたならこの記録にも面白みが増すのだろうが至って普通の女子高生であるため、残念ながらそのようなこともない。
両親は海外赴任中であるため現在はペットも可能なマンションに一人暮らし。まぁ家事もそこそここなせるといった程度だろうか。
…うむ、我ながら全くもって特徴がないな。

いつまでも本題に入らないのではこの記録を作った意味もなくなるのでそろそろ本題に移ろうかと思う。

却説さて、これを綴っているのは8月であるが、事の始まりは一月前に遡る。
熱い夏には人は気休めだろうと涼しさを求める

『あら、猫だってそれは同じよ?』

…訂正しよう。猫も人も涼しくあろうとする。クーラーやプールといった肉体的冷涼感を求めるのは勿論だが、精神的にも涼やかであろうとする。
例えば風鈴の音。
例えば怪談。

これは哀れな少女の起こした事件。
そして"新たな家族"と私の出会いの話である

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