理科室の骸骨O


私の高校のと大して変わらないようなその理科室は一瞬だけ私が怪異に巻き込まれていることを忘れさせてくれた。
一瞬だけだが。

ああ、貴方が先ほど目立ちたがりを追いかけてた方ですね。

「あ、はい。」
ガシャガシャと顎を動かしながら喋る骸骨に内心ではキェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!と絶叫する。

おや、これは珍しい…なるほど…道理で鏡が懐いているわけですね。

「え、何かすごい意味深な発言をされたんだけど。褒められてんの?貶されてんの?コレ。」
【多分褒められてるから大丈夫。
Σb( `・ω・´)グッ】

これは失礼しました。改めまして…ようこそ、お客人。私はこの理科室の主。今や古ぼけた存在ですが、私でよければ何なりと。

「凄く…紳士な骸骨ですな…。」
【骸骨、私たち灯りになるものを探してるんだけど。】

境ちゃんがスマホにタイプした文章を骸骨の顔へと向ける。いや、眼球無いから見えないんじゃ…あれ?この骸骨さっきからどうやって喋っ…止めよう。何かこれ以上は考えない方がいい気がする。

灯りですか?…残念ですが、アルコールランプがある準備室には暴れ者の坊やがおりまして、お入れすることが出来ないのです。申し訳ありません。

「あー…いえ、お気になさらないでください。いざとなったら携帯の懐中電灯機能使うので。」
【後、3階に上がれなくなってるのは何故か知ってる?】

ああ、それは水辺の賢い女性が閉ざしてしまったようです。

「水辺…女性……あ、もしかしてトイレの花子さん?」
【あー…もしかして、彼女の気に障っちゃったの?】


ええ、どうやら亡者があまりお気に召されなかったようです

「…それは、食べ物的な意味で?人間性的な意味で?それとも同人誌s…。」
【それ以上はいけない。】

境ちゃんに口をふさがれスマホを突き付けられた。すまん、ちょっと場を和ませようとしただけなんだ。いや、本当なんだ。だからその生ぬるい視線を向けるのはやめて。

【とりあえず、さっきの廊下に戻ろう。彼女に通してもらえるよう頼まなきゃ。】
「だね、あと東棟の廊下はどうし…っ!?!?」

ドォオオオオン!!

突然大きな音が床下から轟く。

「な、何事!?」
【……鬼が集まってきてる。】

目を細めて床、おそらく1階を睨む境ちゃん。その表情はひどく険しい。

「っていうか、鬼?」

鬼、つまりは獄卒ですよ。亡者の女性は悪霊になりかかっていましたから。

獄卒というと、金棒持ってる角の生えた人型の…。

人間が想像していらっしゃるのとは恐らく違うと思いますよ。

「あ、そうなんですか…っと、境ちゃん?」

袖を軽く引っ張られ、骸骨へと向けていた意識を彼女の方へと向ける

【向日葵、私は1階へ行く。出来る限り時間を稼いでみるから、私が戻るまで貴女は此処の階から出ないで。見つかるの絶対駄目。】
「え、でも亡者が目的なら、私を元の場所に戻してくれるんじゃ…。」

あまり、期待しない方がよろしいかと。普通の生者ならそうするでしょうが、貴女の場合、攫われる可能性もあります。

提示された予想外すぎる可能性に吊るされたままの彼へと聞き返す。

「私の場合?知りすぎたとか、そういうこと?」
【違う、貴女は怪異にとって魅力的なの。特に鬼に対してなら猶更。】
「えっと…それはつまり…?」

境ちゃんの言葉に顔が引き攣る。今まで生きてきた中で告白なんてしたこともされた事もない私が怪異に性的魅力のあるフェロモンを出してるなんて考えにくい。
つまり…

【喰われるかも。】

一瞬で血の気が引いた。

OBack