新たな武器を手に入れよう
戦っていたのが投影された敵、ホログラムだった事が幸いし、飛び散った諸々(見せられないよ!)はシステム音の後に綺麗さっぱり消えていた。本当はもうちょい余韻に浸りたいけど、色々と心配なので宗三君の方へ振り返る。

「Oh...。」

わぁ〜お!

テレビでお色気シーンになった時の効果音が脳内補完される。壁にもたれていた筈の彼は自身を抱いて喘ぐように痙攣していた。勇者なんかに負けないんだからぁ…からのやっぱり勇者には勝てなかったよですね、分かります。いや、私の行動にセクハラのセの字も無いんだけど。どっちかっていうとバイオレンスのバの字一色なんだけど。一気に余韻も何も無くなったわ。自分よりやばい状態の奴見ると落ち着くって聞いたことあるけど本当だったのね。とりあえず空を横に切る様にして血を軽く飛ばす。これこのまま鞘にしまうのは流石にヤバいかなぁ…

「さて、落ち着け宗三君。何だ、私が戦ってる間に一体何があった。」
「いいからもっと戦っ…。」
「落ち着けってば。」

お気づきかもしれないが、この勇者かなり気が短い。何度も同じことを繰り返させるんじゃねぇよとばかりに顔をしかめ、線の細い美青年の頭に容赦ない手刀を落とした。

「一体何でそんな状態に君がなっているのか、ちゃんと説明してもらえるまではそうホイホイと使えない。実は私の寿命を吸い取ってましたなんて話だったら流石の私も笑って許せないし、そもそも君が刀剣の付喪神だという事くらいしか私には分かってないんだ。」
「、は…ッァ…だから、ですよ。」
「…あ?」

ようやく息が整ってきたらしい彼が、しかし未だ熱のこもった瞳でこちらを睨む。

「僕は宗三左文字という刀剣の付喪神ですから、本体である刀剣と感覚は共有しています。刀の本分は斬り殺すこと、持ち主を守ること。その本分が果たされる事に勝る喜びは無いんです。貴女は僕を振るって敵を殺した。貴方の高揚も、その歪んだ喜悦も刀を通して僕に伝わる。」
「つまり私の心丸裸ってことじゃないですかー宗三君ったらえっちー。」

両腕を自分の体に巻き付けて、わざと恥じらうようなポーズをとる。しかしノリの悪い宗三君は煽るわけでも無く、目を細めて睨むだけだ。

「ぶん殴りますよ。というか、さっきから真面目に聞いてるんですか、貴女。」
「冗談だって、要するに刀として振るわれると感覚を共有しちゃって気持ちよくなっちゃうんでしょう。まぁ、理解はしたさ。
でも、君の肉体が傷つけば刀は折れるし、刀が折れれば君の肉体は消滅する。人間の体でも自己防衛が最低限出来るほどの力は必要だよ。いつまでも私が君を振るう訳にもいかないんだし。」
「分かってますよ…そんな事くらい。」

拗ねたように俯く彼に苦笑いを浮かべた。まぁ

「うん、じゃあもう一体位モンスター倒し……は?」
「…どうかしたんですか?顔がより一層残念なことになってますよ。」
「元から残念だと言いたいのか貴様。」

宗三左文字
レベル 20
攻撃力 1200
防御力 470
装備  日本刀

スライム討伐時の、彼のレベルは15だった。私が使ったことでレベルが一気に上がったのだとしたら、暫くは直接戦わせるのではなく私が彼を振るった方が効率良いかもしれない。戦闘に於いて武器は重要なポジションを占めてるわけだが、彼は鈍らという訳ではない。寧ろ名刀と言っても過不足ないくらいなのだ、彼で私の日課をこなしたとしても問題はないだろう。最悪必殺技連打で行ける行ける。

「宗三君に朗報だよ。暫くは私が君の本体を使って訓練をする。ある程度レベルが上がったら君自身にも戦ってもらうけど。」
「れべる…ですか?」
「強さの度合を数値化したやつ。
まぁ要するにだ、

僕と契約して武器になってよ。」

………。


いや、ちょっと待て自分。そうするともしかして私訓練の後毎回彼が喘いでる姿見なきゃいけないのか?

「やっぱ無…。」
「…僕は、もう人間なんてこりごりだと思ってました…でも、そうですね。貴女ならば…。」

アーッ!これアカンやつだ!今更断れない奴や!

前略 我がパーティーの魔術師様
魔王を倒し終わったと思ったら、何か未亡人みたいな青年を拾いました。何やかんやあって彼を鍛えることになったのですが、何か新しい扉を開いてしまいそうで怖いです。どうしたらよいですか?
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