愛の珍道中
「うわっ!生首……って兜か。ビックリさせるなよなぁ」
道に迷っていたら何故かやたらといかつい兜が落ちていた。
「何処かで見た気がするけど誰のだったかな?」
たしかカオスの誰かのだったのだが、カオスにはいかつい兜のヤツが多すぎて誰かわからん!
まあ何かヒントがあるかもしれないし詳しく調べてみるか。
「よいしょっ!うわ、重たっ!」
持ち上げた兜は見た目以上に重たい。
とりあえず中を覗いてみる。
もしかしたら名前とか書いてるかもしれないし。
「……暗くて見えない」
兜の中は暗かった。
目と首のところから少し光は入ってくるが調べるのには十分じゃない。
「うーん……かぶってみるか」
かぶったら持ち主の気持ちになって、持ち主がわかるかもしれない。
「おー!重たくて頭がふらふらする!」
しかも視界も狭くて危ないな。
こんな時に敵に襲われたら大変だしさっさと……。
「おい貴様!俺の兜に何をしている!」
あ、そうだ!ガブラスの兜だ!……ってタイミングが悪すぎる。
「いやぁ、その、これは……」
「さっさと兜を返せ、でないと貴様の首ごとはねるぞ!」
「まあまあとりあえず落ち着いて……」
「とにかく返せ!」
……ん?なんかやたらと焦ってないか?
「あ」
「何だ!」
そうだ、カブラスは兜がないと力を出しきれないんだった。
ふっふっふ、これは良いことを思い付いたぞ。
「ガブラス君、オレと取引しよう」
「ふざけているのか貴様!」
「まあ話だけでも聞いてくれよ。君だって兜がないと戦えないだろう」
「なななな何を!」
わかりやすい。面白いなぁ。
「とりあえず話を続けるぞ。オレは帰れなくて困っている、君は兜がなくて困っている。そこでだ!君がオレを送り届ける。そしたらオレが君に兜を返す。これならお互い助かるだろう」
「そんな提案飲めるか!敵の本拠地に無防備な状態で乗り込むヤツが何処に居る!」
「じゃあオレが道がわかるとこまでならいいよな。はい決定!」
「勝手に決めるな!」
「まあまあお互いどうしようもないんだし、さあ行くぞ!」
カブラスの腕を掴んでとりあえず歩き出す。……道はわからないけど。
「おい!話を聞け!それから腕を離せ!それに何処にいくつもりだ!そっちは全く関係ない場所だぞ!」
「目的地に着いたら離してやるからさ、早く離して欲しかったら早くオレを連れてってくれよな!」
「あーっ!わかった!連れてけばいいんだろう!連れてけば!とっとと行くぞ!くそっ!」
ガブラスはやけくそになったのかオレの腕を掴み返して走り出した。
これってなんかアレみたいだ。
えーっと……。
「愛のブランデー?」
「それを言うなら愛のランデブーだ!って愛は要らん!」
writer 夜魅