Hybrid,Thoroughbred


銀色にぎらり輝くそれがほしくてたまらない、男は、だからおれのモノと面妖に口を歪ませた。
思考は行動。
迷いなど一切なく、黒い鎧を纏った術師とすれ違う黒い銀を追いかけた。





モンスターだ、斬り捨てようとしてセフィロスは、何故モンスターを倒さねばならないのだろうかと降り下ろす腕を押し止めた。
敵は倒すべきだ、モンスターは敵だ、だかは息の根を止めるのだ――順序だてた理屈をまとめ上げるセフィロスの目には人間であるかのようにはしゃぐ赤色が迫っている。
役立たずな武器でピヨピヨ襲い来る、中々の手練れであるだろう槍さばきに、苛。
相応しい者は相応しい物を持つべきだ。
モンスターの槍を軽い身のこなしで避けながらセフィロスは幾度となく武器を壊そうと目論む。
思惑が通じたのか槍は消え去り、わずか開いた距離から両手剣に成り代わった衝撃が刀を打ち込んだ。
ギィィィィン…余韻を含んだ音が静寂に響き渡る。
瓦礫の城は音源を弾き所在が掴めなくなるほどによく響く。
そのやまびこは、ぶつかり合った腕に与えた痺れと酷似していて(面白い、)内心ほくそ笑んだセフィロスはいよいよ本気で斬り捨てようと構え直す。
…のだが、

「ほしい!その刀、くれぇ〜!」

拍子が抜けるとは正に。
セフィロスは一瞬の内に苛立ちがぶり返り、隙だらけだった両手剣をぶったぎった。
モンスター――ギルガメッシュは情けなく頭を抱え嘆いたかと思うと、すぐに立ち直って高笑いを上げながら両手に細い剣を現して床に突き立てた。
調度良いタイミングで蒸気が吹き出し、一連の流れは喜劇役者のよう。
腑に落ちないセフィロスは突っ立った細剣を同じ要領で破壊する。
しかしまた違う武器が精製されこれ見よがしに陳列された。
破壊、精製の繰り返し。
無意味な行為は問答で、セフィロスは疑問を再発させる。
新たな境地に達している…モンスター相手に闘う意義を見出だすことがなかった彼はどうも腑に落ちない。
粉々になっては光に消失する様々な時代、形状の武器が不毛でならなかった。
取っ替え引っ替え突き刺さる床は傷ひとつ残らないし、壊しても壊しても何度繰り返しても、次には美しくある。
わんこそばのような流れ作業、問答の回数を数えるのが億劫になる頃ようやっと武器のストックがなくなる。
刀ひとつにコレクションは微塵となった。
――何、次には美しい。

「どうだおれの武器は?どれも強者ばかりだろう!」
「…全てなくなったがな」
「お前の刀を手に入れたらそれが唯一となるのだ」

消された武器、明日には甦る壊れ物、だというのに唯一とする即物。
瞬間瞬間を生きる様はモンスターとして確からしい。
ギルガメッシュの訴えは全くその通りであったし、嘘もなかった。
彼は宣言を決め込んだ瞬間、それ以外は本気で手放していたのだ。
思考は行動に直結する。
全てを捨てて、壊させて、それでもただひとつが欲しいと言う。
銀色に光るそれ、が欲しいと。

「奪えるものなら」
「そうさせてもらう!怖じ気付くなよ?」

瞳孔のない白が絵に書いたようにピカリ輝く。
この問答には欠点があった…小さな齟齬が。
武器を並べ立てたのは自慢に他ならず、ギルガメッシュが誇示したのは支配欲。
壊れ物が美しく甦る頃、肥大した齟齬によって覆されることになる。
ギルガメッシュはセフィロス自身が欲しいのだ。






writer うお






「#オメガバース」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -