WOL×皇帝
皇帝の目の前で跪く光の戦士。
ついに勇者さえも支配した暴君。
それなのに、皇帝は露骨に顔をしかめ怪訝そうにウォーリア・オブ・ライトを見つめた。勇者の眼差しは真っ直ぐに皇帝の瞳を見つめながら、慈しむように右手を取り手の甲に唇を落とした。その行動にぎょっとした皇帝は勢い良く払い除けたものの勇者は全く微動だにしない。その熱い視線を向け呟く。皇帝はとうとう背筋に怖気が走った。
「愛してる、マティウス」
光の戦士、コスモスのリーダーと言ってもいい。ウォーリア・オブ・ライトがこうなった原因は簡単だった。要は皇帝の自業自得である。彼は生前から魔術師であり、加えてトラップを貼るのはお手の物。
もし光の戦士がカオスへ落ちることがあれば、カオスの勝利はより確実になる、そう考えた皇帝は自らの魔法で彼を人形のように操ろうとした。
しかし思考操作を行うには、ウォーリア・オブ・ライトは強靱過ぎる精神を持っていた。元来操るといった術は意志薄弱な者が使いやすい。何らかの心に闇があるもの、そういった付け入る隙が全くない彼をどのようにカオスへ引き入れるか。
皇帝は考えた。思考を強要して操作するのではなく、刷り込む…
完全に支配できないのであれば、一部でも、と。
皇帝がウォーリア・オブ・ライトにかけた魔法は『皇帝を好きになる』というものだった。
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