皇帝×WOL
title:終わりは最初からわかっていた
何度愛を囁いても、何度その身を抱いても、決してその意思だけは変わりはしなかった。
自分は闇に、『奴』は光に。
所詮は平行線。
所詮は敵同士。
「私は皆と進む」
光の戦士の言葉。
最後の逢瀬とした日。
端整な顔立ちに笑みの一つでも浮かべれば良いものの、『奴』は笑いもしなかった。
その強い意志を宿した瞳が、脳裏に焼き付いている。
「マティウス」
肌を隠す様に、寝台に使われている絹のシーツを身体に掛けて。
「お前の行く道は、私の意志とは反している」
涙なんて、ありはしない。
「……お前自身は好きだが、それでも許せない」
いつだって真っ直ぐだった。
「だから、私はお前を倒す」
―――――光よ。
皇帝は座っていた玉座から立ち上がる。
そろそろ『奴』が『虫ケラ』と共に此処に来る。
『奴』の気配は本人が意図して消していない限り、どんなに遠くても良く判る。
「ならば」
漆黒の空を仰ぐ。
星々の輝きよりも、『奴』の輝きの方が眩しく美しい。
「せめて、この手で葬るのみだ……光の戦士よ」
その顔に皇帝は、不敵な笑みを浮かべた。
(だが心は?)
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