皇帝×ガーランド
残念な愛し方の見本
「して、貴様はいつ私の隷属となるのだ」
「ぶふっ」
テーブルに片肘を付いた皇帝の一言により、ガーランドは含んだばかりのコーヒーを盛大に吹き出した。
ひょい、と身軽にかわした皇帝の表情は変わらない。
白く美しい肌は硬質に冷たく、それは自身とて同じ事。
冷えた隷属を増やし何と使うのか、カップを置いたガーランドは椅子を引く。
珍しく茶に付き合えと言ってきた皇帝の企み事を暴くには好機と考えたが、それすら億劫だ。
くだらない会話をする暇があるのなら、光の戦士に闘争を挑む方が時間を使うに有効だろう。
「貴様が何を考えているかは知らんが、そのうち痛い目に合うぞ」
「ふん、そのまま返してやろう」
茶菓子代わりに置かれた小さな金平糖を一粒、口元へ運ぶ皇帝の傲慢なさまに呆れた。
可愛らしい恋慕でもなければ微塵も感じられない愛情でも無く、在るのは醜悪な支配欲。
全面から押し出し、隠す事すらしない。
皇帝らしいと言えばそうかもしれないが、焦燥を感じたのは気のせいだろうか。
「いずれ貴様は私の物となり、私だけを見る事となるのだからな。無論、休息は与えん」
くつくつと肩を震わせる姿は何処までも暴君であり、頂点に立つ男の思想に終止符を打つ事は不可能だ。
踵を返す。
余計な感情が生まれる前に。
皇帝が手を伸ばし、掴むのはガーランドのコーヒーカップ。
傾けて、一本の線が零れ落ちる様をガーランドの後ろ姿と重ねた。
さて、次の手は。
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