フリオニール×皇帝
「はな、せ…」
逃げる手を掴み、抱き寄せた体が温かいからフリオニールは戸惑う。彼もまた自分と同じ人間であるという事実はあまりにも現実味がなかった。捉えた彼が力なく静かに息を吐き、血に濡れたまま自分の胸の中で静かに死んでいくのを傍観する事も出来る。復讐者として彼を裁く事が自分には許されるはずだ。
「…もう諦めろ
皇帝は何も言わなかった。いや、もう言葉を紡げるほど意識はなく、フリオニールの事もほぼ無意識に拒絶していた。弱々しく振りほどく為に揺れた腕は虚しく震えるだけに終わる。
口から零れた赤い血がフリオニールの衣服に染み込んでいく。誰かが目の前で死ぬのはもう何回目だろうか。もう血が流れるのは嫌だと叫んだのは何度目だろう。
これで最後、と願う内に自分には何も助けられない気がして
「お前すら救ってみせる」
フリオニールはケアルを唱えた。
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