フリオニール×ガーランド
一方通行、願う交差
強靭な肉体と精神を持つ者ですら畏怖するだろう。
全面から溢れ出す闘志と覚悟の念。
迫られたら自身の信念さえ灰と化し、朽ちる姿が容易に想像出来てしまう。
しかし闘争に己の全てを費やす男が、諦めを滲ませる事もあった。
時々見受けられる、自棄の行動。
武器で身を守る此方に、勢いだけで単騎突撃してくるのだから始末が悪い。
変形剣は見た目と相応に重く、一撃は鋭い鋼の風を巻き起こす。それを知っているからこそフリオニールの行動は早い。
先手必勝、魔力を纏った矢を放ち、ほぼ同時に手斧を別軌道を描くようにして投げた。そして地を踏み、駆け出す。
手に馴染んだ剣やナイフは既に遠くに転がっていた。それでも十分な戦い方を知っている。
分割した剣で叩き落とす瞬間、微かに生まれる隙を突くように、フリオニールの槍が煌めいた。
だが相手は混沌陣の頭。油断など一切していないフリオニールにも想定外な事が起きる。
鎖で繋がった大剣は手斧と矢を叩き落とした反動で再び一つに戻り、ほんの一呼吸の間に猛者の手の中だ。
「若造めが!」
「くっ…!!」
ガーランドが突き立てた巨大剣は大地を震わせ、接近してきたフリオニールの足元を崩す。
地響きは脳天まで響き、ぐらり、方向感覚を失った。背が地に出会う前に槍を突き立て、痺れた足で地を踏み締める。
雷を食らったかのような衝撃に胃の中身が込み上げるが、体力を奪うだけの行為だ、腹に力を入れ飲み込む。
かしゃん、ガーランドの具足が鳴いた。
間合いに入れてはいけない。今は、攻撃手段が。
「弱者ほど死に急ぐ」
喉元に突き付けられた大剣の先端が常闇の鈍い煌めきを見せた。
堕ちてしまえば楽なのだろうか。想像を試みたが上手くいかない。
なら彼の手を引いて、日の光の下を歩く方が想像し易かった。ただ、何だか滑稽な絵面だな、と喉の奥で笑いを噛み砕いた。
「随分と余裕だな」
「…そんな事無いさ。貴方相手では誰もが必死になるよ」
残った武器は、手放さないよう必死に掴んだ槍。
それから、想いの深さ。
「貴方を救いたいのはあの人だけじゃないんだ」
prev | next