フリオニール×オニオンナイト
確か、普通にテントを張って、見張りのセシルを残して、寝る支度をしていただけだ。
そうしたらオニオンが、フリオニールってなんで女の子苦手なのとかちょっと生意気な様子で言い出して、ついつい苦手ってわけじゃあなんて反論した。そうしたら、そうしたら……どうしてこうなる。
「やっぱり怖いんだ?」
腹の上にのしかかるオニオンは、鎧を脱いでおり、軽装。子供らしい高い体温をフリオニールに押し付けながら、顔を近づけてくる。
キスしたことはあるのかと聞かれて、多分、と答えた。そうしたらこうなった。教えてと。なんでだ。
オニオンの柔らかそうな鼻筋が、置いたランプの明かりで、彼のなだらかな頬に頼りない影を描いている。
キス、という言葉の呪いで、同じく柔らかそうな少年の唇がよく笑って見える。
きりっとつり上がったその端っこは、どうしてだろう、誘惑する美女みたいな貫禄を備えていて、フリオニールの顔を熱くさせる。
「怖く、ないけど、さ」
「なんだよ、はっきりしないなー」
フリオニールはやっときっちりオニオンの顔から目を逸らしてしゃべる。
「お前、後悔するんじゃないのか?」
オニオンの、喉で笑う気配は、やはり大人っぽかった。
「フリオニールがしないなら、しないと思うよ?だから、ねぇ、どうする?」
オニオンは、わざとくすぐるように低くした声をフリオニールの耳元に滑らせた。
フリオニールは耳に寄せられた感触に、青少年らしくごくりと反応した。
しかしそのままでなるものかと、固まっていた手を動かしてオニオンの肩を抱いた。くるり、上下を入れ替えて、驚いた顔を見下ろす。
なんとか、主導権は得られただろうか。フリオニールはどんな表情をしていいのか分からないのでそのまま、怒ったような、拗ねたようなままで言う。
「ませガキめ、覚悟しろよ」
それで結局嬉しそうに微笑まれては、もうこれ以上、どうしようもない。
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