ガーランド×WOL


title:伸ばした手は何処へ



これは宿命なのだ。

避ける事等出来はしない。

   絶望に堕ちた我が心を満たす『光』よ。

   今回は我が手で終わらせてやろう。

   それがお前にしてやれる唯一の事だ。




「はああっ!」

勇者は甲冑を身に纏ったその姿からは考えられない程の軽やかな動きで、宙をふわりと舞って盾を重力に任せて振り下ろして来る。

「これしきの事!」

猛者は引きずらればならない程の重さの大剣を、遠心力に任せて振り抜いて盾を弾き返し、そのままもう一度振れば大剣は鎖剣となって宙にいる勇者に襲い掛かった。

勇者はそれを見越して素早く地上に足を付ければ、一気に間合いを詰めてそのまま手元に戻って来た盾を猛者に投げ付ける。

「ぐぅっ!?」

「貰った!」

勇者が繰り出した打撃攻撃に一瞬猛者の動きが止まる。勇者はそれを見逃さず、猛者が纏った甲冑の繋ぎ目がある腹部を素早く斬り付けた。

「!?」

だが猛者は瞬時に身を捻り、致命傷を避けて来た。

もう一太刀、と思った矢先に鎖剣から今度は大斧へと切り替わった猛者の武器が勇者の頭上に僅かな影を作る。

「甘いわぁっ!」

振り下ろされるのと同時に勇者は脇に飛び退く。

勇者が先程までいた場所の床が凄まじい轟音を上げて凹み、砂埃が立つ。

「小賢しい。かわしおったか…」

大斧が突き刺さっている床は大きく罅割れ、抉れていた。

勇者は退いた勢いのまま間合いを取った。

「っ……」

勇者の頬には大きな痣が出来、僅かに血が滲む。

先程の飛礫が顔に当たったのだ。



「もっと……もっとだ!」



大斧は大剣の姿に戻り、猛者はそれを床に打ち付け、大地を揺らす。



「もっとわしを楽しませて見せい!」



雄叫びと共に噎せ返る様な闘志。

辺りを包み込む闇の気配。



「ガーランド」



勇者は剣を持つ手を胸に当て、天へと向けた刀身を見上げた。



「宿命を今、終わらせる」



凛、とした誓いと共に更に研ぎ澄まされる気配。

闇の中に一点だけある、絶対的な光。



そしてほぼ同時に床を蹴って駆け出した。



   終わらない虚しい宿命だから。

   終わらせると誓った。

   過去がない私に存在意義を与えてくれた『闇』よ。

   必ずこの手で救うから。

   それがお前にしてやれる唯一の事だ。





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