オニオンナイト×ガーランド
大好きなかわいこちゃん
「もうちょっと右、あっ、行き過ぎ!」
「むぅ…っ」
経緯は話すと長い。
ガーランドは秩序の小童であるオニオンナイトを肩車にして担ぎ上げ、彼の指示するがまま左右に動いていた。
ガーランドの兜を抱えて腕を伸ばすものだから視界は最悪。更には角を掴み出し力任せに引っ張るせいで、小僧の力とて折れるのではないかと内心冷や汗ものだ。
うーん、と唸る声が頭上から届く。ガーランドは現状を抜け出すべく脱力した。
「諦めるがよい、貴様には不相応ということよ」
「そんな事無い!」
「こ、こらっ、暴れるな!」
掴んでいた両足をばたつかせたものだからガーランドは慌ててバランスを保つ。
怪我でもさせては、秩序の番長である光の戦士にくどくど説教されるのは目に見えていた。
理不尽さを呪いながらオニオンナイトを抱え直すと、「手を離して」と、頭上から恐ろしい発言が届く。
「僕に考えがあるんだ」
「…落ちてくれるなよ」
オニオンナイトの細い足首を掴んでいた手を、恐る恐る離す。すると、がしっと両角を掴まれ、ぴょんっと身軽にジャンプをしたかと思うと、着地点はガーランドの肩。振動がダイレクトに反響したが、ふらつくオニオンナイトの両足を再度掴んだ。
「ほら!こうすれば届くでしょ?」
「いいからさっさとせんか。危なっかしい」
「あはは、ごめんごめん」
よっ、腕を伸ばした先には木の枝に引っ掛かった、一枚の可愛らしいリボン。
幼い指で其れを掴む。やっと届き手に入ったリボンをしっかりと握り締め、満面の笑みを浮かべたオニオンナイトは現状を忘れ、思い切り両腕を空へと伸ばした。
「やったぁー!!」
「あ、阿呆か貴様っ、いきなり重心を後ろにかけおって…!」
「え」
ぐらり、身体が傾く。
まるで空を飛ぶような感覚に襲われ、ガーランドごと背後へ倒れているのだと理解した。
「うわあっ!」
次に訪れるだろう衝撃に備え、ぎゅっと目を閉じた。瞬間、思い切り足を引かれ、鋼鉄の鎧の中へと身体が包み込まれる。
どすんっ、と、衝撃はガーランドによって吸収され、オニオンナイトが痛みを感じる事は無かった。
瞼を押し上げると目前にはガーランド。非常に美味しい場面ではあるが、今はそんなやましい考えをしている場合では無い。
「…っ、…ガーランド!大丈夫?!」
「…ふん、この程度。貴様は大事無いか」
「う、うん、大丈夫。…ありがと」
上体を起こし、オニオンナイトの無事を己の眼で確認したガーランドは鉄火面の内側で安堵の息を吐く。
これで説教は逃れた、と。
ふと視界が曇った。
どうやらオニオンナイトが腕を伸ばし、また何やらやっているようだ。
やがて狭い視界いっぱいにオニオンナイトの笑みが飛び込んできた。満足気に上がった口角が幼さを倍増させている。
「やっぱり、不相応じゃないよ。ぴったりだもん」
「一体、何の事だ…」
疑問符を浮かべたガーランドの鎧兜を象徴する角には、先程のスーパーリボンが可愛らしく結ばれていた。
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