ガーランド×暗闇の雲
暗闇の雲は、何度も何度も見ていた。ガーランドが繰り返し戦い、喜び、傷付き、また戦へ出かけるところを、何度も何度も見ていた。
今回は激戦だったらしい。ガーランドはたくさんの血を流しながら、大地に寝そべっていた。
暗闇の雲は上からふんわりと近付いて、ガーランドの仮面を外した。虚ろな目は、雲を映すが、見てはいない。
「くたばりおったか」
「勝手に殺すな」
死んでいるも同然の目付きをしているのに、ガーランドは笑いを含んでそう言う。目が見えていないようだ。
汚れたガーランドの体を、風が撫でて去っていく。
暗闇の雲も、それに乗って去ってしまえばいいものを、そうできずに居た。何度も何度も、目にして、別段珍しくもなんともない様子だというのに。
「雲、わしの血は、何色をしているか」
暗闇の雲は言葉につられて、ガーランドの体を見た。それからその血が汚す土を。
見えない目も、じきに回復するのだ。暗闇の雲はさて、と答えを避けた。いずれ分かることだ。
ガーランドは大きなため息を付く。満足そうにも、呆れ果てているようにも聞こえたのは、暗闇の雲が人でないせいなのか。
「雲」
「なんじゃ」
しつこく呼んで、ガーランドが目を閉じた。開いても何も見えないことをようやく理解したのか。何度繰り返しても治らぬ愚直。
ガーランドは言う。
「寂しい」
呆れた男だ。
愚かな男だ。救いがたいど阿呆だ。
暗闇の雲は苦々しい思いで、ガーランドの唇に噛み付いた。
それは何度繰り返しても変わらない、珍しくもなんともない、面白みのない血の味をしている。
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