カイン×ガーランド
人肌に慣れない二人の不器用な攻防戦
繋いだ手は所謂恋人繋ぎ。
指と指の間に他人の指が絡まって、どれが己のものだったかと錯覚を起こす。
確認の為にほんの僅か動かしてみると、隣に並んだ肩がぴくりと揺れた。
それが面白くて何度か続けてみたが、こちらの意図を察したらしい、ふん、と鼻で笑われ、逆に強く握り締められてしまった。
先程以上に触れ合う手のひらから伝わる鼓動にカインは目元を赤らめる。
「…おい、あまり強く握るな」
「挑発したのは貴様だろう」
「俺は、別にいいんだ」
「…何だそれは」
静寂の王が支配する闇の世界で、響くのは互いの言葉だけ。閉鎖された空間だとしてもそんな簡単に羞恥は拭えない。
それでも僅かな時間を活用し、確かめる。己の内に潜む感情の正体を。
いいや、既に気付いているのだろうが、認めたくないと幼い自尊心が邪魔をしていた。
それとも、カインの思考はそこで中断される。
不意に離された手は空虚を掴み、逃げた其れを追う事は許されない気がしてカインは知らないフリをした。気付いているガーランドは再度鼻で笑う。そうして拒否の念を押すように己の拳を握り締めた。
「互いに非生産的な物事は好かんだろう」
「…それは」
元も子も無い事を言う。全てを拒まれたといっても過言ではない。唇を閉ざして彷徨わせる視線にガーランドは外套を翻す。
見透かされた、気恥ずかしさを隠すように前髪を掻き上げる、そんなカインに背中を向けたガーランドは変わらない声色で選択肢を与えた。
「求めるのならば、我等の下へ来るが良い。闇を持つ者は歓迎するぞ」
手を伸ばす事が出来ないカインは項垂れた。
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