フリオニール×WOL


title:―――箱



この想いに気が付いた時、自分はおかしくなったのだと思った。

ずっと尊敬していて、背中を追い掛ける様に力を身に付けて来たのだ。

彼に誇って貰える様に只、直向きに在ったのだ。



それが…どうしてこうなったのだろう?



彼も自分の男だ。

叶う事等、有りはしない。

そう考えるだけで苦しくて…独りになれば涙が零れる事もあった。



嗚呼、人を愛すると言う事は…こんなにも苦しい。



知られてしまえば全てが終わる。

今まで築いてきた信頼もまた。



それを考えると今度は恐怖が押し寄せてきた。



それだけは、それだけは避けなくてはならない!

これ以上、これ以上苦しい思いはしたくない!!



……だから自分はこの想いを封じた。



箱に入れて。

鍵をして。



そうすれば、ほら。

今までの様に振舞える。



それがいい。

それでいい。

それで…それで……。





「フリオニール」

「え?あっ、何ですか?」



夕食を終えて、それぞれが思い思いに過ごせる睡眠までのひと時。

フリオニールが戦利品の整理をしていた所にやってきたのは、ウォーリアオブライト。

物思いに耽っていた所に急に話し掛けられたから、驚いてしまった。

「驚かせてしまって済まないな。…この間君が欲していたアイテムに必要な素材を入手したから持って来たのだが」

彼がいつも腰から下げているポーチを掲げて見せる。

「本当ですか?有難う御座います」

それを受け取ってフリオニールは荷物の中に入れていく。

「時にフリオニール」

作業を終えたのを見計らってウォーリアが突然訊ねてきた。

「はい?」

「何か私に隠す、又は偽っている事があるのではないか?」

アイスブルーの瞳が、フリオニールを真っ直ぐに見つめている。

「……え?」

フリオニールは眼を見開く(止めてくれ)。

「最近、私への態度に違和感を覚えている…言動は全く変わらないのだが…」

光は全てを認識させる事が性だ(その箱に触れないでくれ)。

「そんな事…ある訳がないでしょう?そもそも貴方に隠す様な事なんて…」

だから貴方もあらゆる事を認識させ、そこに訴えかけて来る(鍵は貴方自身)。

「フリオニール」

ウォーリアの言葉がフリオニールの言葉を遮る(鍵穴の場所が判れば、後は挿し込んで回すだけ)。



「そんな君を見ていると、辛くなってくる」



眼を伏せ、切なげに眉を寄せるウォーリア。



「どんな事であっても、私は受け入れよう。君の為に」



フリオニールの頭の中で、小さく錠が外れる音がした。



封じてきた思いを吐き出す様に、フリオニールは彼の身体を押し倒した。






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