セシル×WOL
title:泉の水の様に止め処なく
真っ直ぐで、自分よりも生真面目で、強い。
だが仲間と居る時間が少ない貴方は、仲間に誤解される事もしばしば。
無愛想だから表情から考えを読み取る事すら出来ない。
それに相俟って口数も少ない。だから救いようがない部分が多い。
………それでもどうにかしないとなぁ。
セシルはそう思いながら首を小さく横に傾けて彼の後ろを歩いている。
見回りの最中なのだが、恐らくセシルが気配を消して抜刀して襲い掛かっても必ずバレるくらいに気を張っているのが窺える(やったら絶対返り討ちに遭う)。
………あれじゃあ誰も近寄れないよ。
隙が一切ない。それが更に彼を仲間から遠ざける。
戦士達の間では、尊敬を通り越して畏怖の対象となりかけている。
『稽古を付けて欲しいんだけど、彼って積極的に動いているから頼み辛いな』
苦笑しながら言うフリオニール。
『どうして単独行動ばかりなんだろうね?僕達信用されてないのかな』
眉を寄せて言うのはオニオンナイト。
『この間スコールに悪戯しようと思ってたらそこを見つかってさ〜…あの殺気だけで殺されるかとオモイマシタ』
これはバッツ(自業自得だけどね)。
『私、まだきちんと会話した事ないの…』
しょげた顔で相談されたのはティナ。
『殆どの敵を独りで片付けられてしまって、かなり気まずかった』
探索から帰って来てこう漏らしていたのはクラウド。
『……………そもそも全部が苦手だ』
腕を組んで凄い苦い顔をしていたのはスコール。
『折角の美形なのにさ、あれじゃあレディには怖がられるだけだと思うんだよ』
肩を竦めるのはジタン。
『全体的に固い!堅い?硬い、かな…とにかく、もっと打ち解けて欲しいッス』
首を傾けながらも心配そうに言うのはティーダ。
ねぇ、貴方は一体何を考えているんですか?
(貴方の優しさを伝えても誰もあまり信じてくれなかった)
皆が貴方をこうも思っているのに、貴方はいつも一人。
(貴方も皆を思っているのに、これでは虚しい)
お願いだから、もっともっと貴方を皆に教えてあげて下さい。
(僕も思いも、皆の思いも教えるから)
「……セシル、今何と?」
「えっ?」
気付けばウォーリアは立ち止まってこちらを見ていた。
その呼び掛けに気付けば、危うく彼の背中にぶつかりそうになるくらいに近くまで寄っていたから、慌てて半歩身を引いた。
「ご、ごめん!…で、何が?」
「何を考えているか、とか…皆が貴方を思っているとか……教えて欲しいとかが聞こえたのだが」
「あ…」
心だけで留めて置くつもりが、所々口を告いでしまっていたのだ。自分の顔が赤くなるのが判る。
「……判りました。じゃあ少しだけ休憩を取りましょう」
どうやら貴方への気持ちが溢れ返っている様だ。
僕だけの気持ちじゃなくて、他の仲間8人の気持ちも。
「ずっとずっと思っていた事があるんです。この際はっきりと言ってしまいますから」
嗚呼、自分が笑っているのが判る。
きっと楽しくなる事が判っているから。
全部きちんと受け止めて下さいね?ウォーリアオブライト。
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