WOL×セシル


ぐいと引き寄せて、逃げないようにと手首を掴んでからウォーリアがようやく相手の顔を見た時、そこには戸惑いの色が多分に含ませたセシルの顔があった。
怖がらせてしまっただろうかと力を込めていた手を少し緩める。すると、セシルのとらわれていた指の力も僅かに緩められたような気がした。

「何度も言うように、私は君を好いている」
「知っています」

気まずそうにセシルはウォーリアから目を逸らす。紫の瞳が、しばしウォーリアの視界から消えた。
ウォーリアがセシルに思いを伝えるのは、怖がられたいからでも警戒されたいからでもない。ただ溢れる感情をセシルに知ってもらい、あわよくば受け入れて欲しいからだ。
伝える度に逃げようとするセシルに焦れて、今は少し強行手段に出ているが、無理強いをしたいわけではないのだ。
だが、勢いで掴んでしまった手をあっさりと離したくない程度にはセシルを手に入れたいという願望があることは否定しない。

「嫌ならそうだと言ってくれないか。私は君に迷惑をかけたいわけではない」

こういう言い方は狡いという自覚はある。
ほら、現にセシルは困った顔でウォーリアを見ている。
違います、と。
セシルの口が動くまで、ウォーリアは彼をこのまま離すつもりは、ない。




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