ゴルベーザ×WOL
title:闇の願いを光が叶え
「まさか、そなたがカインに手を貸すとは思わなかった」
月の渓谷。
ゴルベーザは一人の青年の前に姿を現してそう声を掛けた。
「戦いを終わらせる為に我々は召喚された。そして必ずコスモスの願いを叶えると誓った……その為ならば私は何も厭いはしない。眠らせる為とは仲間を手に掛ける事も、また」
青年はその存在に最初から気付いていたのか、特に動じる事もなく言葉を紡ぐ。
「……流石、光の戦士の名を冠するだけの事はある」
その強い決意は、コスモスの決意を彷彿とさせる。
「恐れはないのか?」
「ない。それでも光は我等と共に在るのだから」
ウォーリアオブライトは渓谷を照らす太陽の方角を見る。
「光は私の持つ想いや願いや祈りを指す。それらは全て未来へと向かっている……私はその未来を紡ぎたい」
そしてゴルベーザを見据える。
当然の事ながらその眼に迷いはなかった。
「……そなたを試す必要は、やはりなかったか」
そう言いながら、ゆっくりと相手の傍に歩み寄りその身に触れ様と手を伸ばしたが―――その手は少しだけ空を掻いて降ろされる、筈だった。
「ゴルベーザ」
ウォーリアがその手を取り、自分の頬に当てる。
そしてその眼をゆっくりと閉じた。
「お前は闇を歩んでいる。だが」
そしてゆっくりと眼を開ける。
その眼はゴルベーザを真っ直ぐ見つめていた。
「光に触れてはいけない、と言う事はない」
そしてゴルベーザの手をゆっくりと離した。
「では私は失礼する。コスモスの元へと急がねばならない」
そして彼は背を向けて歩み去った。
ゴルベーザはその背中が見えなくなるまで、微動だにせず彼を見送る。
「……………」
誰もいない渓谷で、ゴルベーザは彼の頬に触れていた掌を見る。
その掌には何も残ってはいなかった。
だが大事そうに、ゆっくりと握り締めた。
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