ガーランド×ジェクト

貴方の鼓動の音でしょう

カンカン、と他人には大した音でも無いであろう鎧と硬いものがぶつかる音は、それを着込んでいる者からすれば大変な音になることをガーランドは鎧を無遠慮に叩くジェクトに教えてやりたい。しかしこどものような無邪気に輝く瞳の前には彼もたじたじで、何も言えないまま困ったように銀色の兜の奥で微笑むしかないのだった。
「やっぱ鎧かっこいいわ…!なあ!鎧かっこいい!」
矢張り精巧な金属の造り物というものは男の心を揺さぶるのだろう。銀色の甲冑は薄く砂埃に汚れているがそれすらも闘いの跡を想わせて心が震える。所々に激しく打たれた痕や斬りつけられた痕、燃え盛る焔を弾いた痕や拭った血の痕が見えて、ガーランドはその度に繰り返される闘争を想い少し暗い気持ちになることもしばしばあるのだがそう誉められると嬉しくないわけは無い。ガーランド自身、闘争の酔いに堕ちた身ではあるが正々堂々を好み、それを心情としている処があるので、その闘いの跡を讃えられれば武人としての心が沸き立つ。ガーランドはなんだか気持ち良くなる。ジェクトの傷をさらりと撫でた。
「お前の傷も、戦士としてのお前が如何に勇敢に闘ってきたのか、如何に強いのか…それが分かる凄まじいものだ」
ふふ、と兜の奥で微笑んでやるとジェクトは頬を軽く染めて「ま、まあ、俺様は最強だしな!そんな当たり前のこと褒められても…」とぽそぽそ嬉しそうに零す。ガーランドはそんなジェクトが可愛く見えた。くすりともう一度喉の奥で笑う。キッとジェクトが睨み付けてきた。
「おめえは本当、ずりいよな…鎧だけでもかっこいいのなあ…」
ぽそり、小さく呟いた声はガーランドの耳に確実に届く。ガーランドは兜の奥で声を出さずに顔だけで笑いながら
「む…何か言ったかジェクト?言いたいことがあるなら、聞くが?」
意地悪くそう聞く。ごん、と鎧に衝撃が走った。




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