ガーランド×ギルガメッシュ
2012/12/17 21:22


*WOL×ギルガメッシュの続き


「あーあ、やっちまった……」

手合わせを挑んだあの青い鎧の戦士はなかなか強く、何度も何度もギルガメッシュは戦うことができた。
次元の狭間の常に変わっていく景色の中で、何度も何度もぶつかりあった。
しかしもの足りなかった。
男の剣には熱がない。戦い始めてめきめきと伸びた実力は驚嘆に値するが、それに付随する熱さがなかった。戦いに対する情熱や、相手に対する敬意が、全くといっていいほど育たなかった。
これでは、新たなライバルとして呼ぶことが出来ない。
その苛立ちを込めて思いっきりやってしまったら、男をどこかに吹き飛ばしてしまったのである。
これでまたギルガメッシュは一人だ。

「くそー、おれが悪かったぜー、一人にしないでくれぇー」

嘆いたところで男は帰ってこない。
しかし、男を見つけた場所で、動くものがあった。ギルガメッシュは猛ダッシュで近付いた。また、誰かいるのかもしれない。
揺れるそれは間違いなく青いマント。ギルガメッシュは思い切りそれに抱きついた。

「……新たな戦士か……?」

マントの先についていた重厚な冑が振り返った。とても長い角が左右両端に生えている。
いつの間にかそこは古びた教会のような、神殿のような場所に変わっていた。まあ、次元の狭間でもよくあることなので、別の世界に来たとは言い切れないが。

「古いか新しいかは知らないが、おれさまは伝説の剣豪ギルガメッシュさまよ!」

マントを離して胸を張れば、目の前の巨躯の男に低い声で笑われた。
男はいかにも歴戦の猛者とした空気をまとっており、手にしたその大剣は中々の業物のようだ。
武器に目が無いギルガメッシュは思わぬ出会いに凶暴に笑う。

「ほう、威勢は良いようだな。カオスもまた、妙な者を招いたようだ」
「なんでぇ、馬鹿にしてるのか?なんならおれの実力、試してみよ!」

男はますます声を出して笑い、その大剣を構えた。
男の構えは、巨躯に見合った堂々たるものだ。不思議なことに、凶暴そうでありながらどこか優雅でもある。

「貴様のような男は嫌いではない。よかろう、貴様の実力、見極めてくれる!」
「ぃよっし!おれが勝ったらその剣貰い受けるぜ!」

ギルガメッシュの一方的な宣言は、男の剣が鎖を連れて迫る音で掻き消された。


「あんた、やるなぁ……」
「ふっ……お前こそ……」

お決まりのセリフを吐いて、二人は一度武器を収めた。
明確な決着はつかなかったが、充実した戦闘だった。
あの、まさか変化するとは思わなかった、男の武器を奪えないのは惜しいが、それに勝る戦いの喜びに、ギルガメッシュは晴れ晴れとした気持ちで男に手を差し出した。

「あんた、名前は?」
「ふはは、そうであったな。これは失敬。わしの名はガーランド。お前のような気持ちの良い剣豪を我が軍に迎えられて嬉しく思う」

ガーランドは躊躇うことなくギルガメッシュの手を握った。
ギルガメッシュは軍?と思ったが、まあなんでも良かった。とりあえず、寂しい思いはしなくて済みそうだった。

「では早速、我らが主の下に案内……」

と、言いかけて、ガーランドは沈黙した。辺りを探るようにゆっくり見回している。
そしてため息を吐いた。

「すまんが、急用が出来た。主への紹介はまた後にしよう。しばらく散策していてくれ」

言いながらすでにガーランドは歩き出している。
こんな見知らぬ世界にまた一人にされるのか、とギルガメッシュは慌てて追いかけるが、ある点でガーランドの体が闇色の靄に包まれ、消えてしまう。

「我々はコスモスの戦士たちと戦っている、ヤツらにはくれぐれも用心するよう!」

そんな、来たばかりのギルガメッシュには分からない忠告を残して。




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