ガーランド×カイン
「それがお前の秩序か?」
嘲笑混じりの問いかけはカインの神経をゆるりと逆撫でしていく。
何も言わずに得物を投げるが、それは余裕たっぷりにかわされてしまった。
明らかに不機嫌そうに舌を打つと、銀の鎧をまとったその人はくつくつと喉を鳴らす。
その視線が捉えるのは、自信が眠らせた仲間の姿。
「それが秩序とは思えんな」
可笑しくてたまらない。
そんなことを含んでいるような口調だった。
ギリ、と奥歯を噛みしめて、カインは竜顔を模した兜を脱ぎ捨てた。
カランと間抜けな音をたてて地に転がるそれを気にもとめず、彼は銀色の奥にある濁った眼を睨みつける。
またしても耳障りな笑い声が聞こえた。
「誰がなんと言おうが関係ないな。これは俺の決断であって秩序ではない」
「そうか」
「…何が言いたい」
口の中に鉄の味が広がる。
構わずにさらに強く歯を噛みしめて、カインはガーランドの鎧に拳を叩きつけた。
鈍い痛みが掌を痺れさせる。
滑稽だ。
わかってはいるくせに、そうする以外できない気がした。
じわりと視界が滲む、その意味がわからない。
「言いたげなのは、お前の方だな」
憎まれ口のはずのそれは、なぜか優しく思えた。
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