クラウド×皇帝


皇帝には虚ろが理解出来ぬ。
この身体に満ち満ちた黄金の覇気は、具体的な魔の業となって皇帝を彩る。
皇帝には迷いが理解出来ぬ。
定めた目的に従順なる思考は、それが最も尊き力というように手段を構成する。選択に対する迷いは児戯だ。どちらを選んでも結果は皇帝に跪く。良い女のように、気まぐれに、小首を傾げるだけで善い。
即ち皇帝は、この兵士が理解出来ぬ。
示された単調な道すら見えぬと、無口に、目だけで嘆く臆病者。
哀れに想って指を伸ばせば、鼻も鳴らさず見返すだけ。

「来い、クラウド、混沌に染まれ。いつまでも人形のつもりでいるのか」

皇帝の愛は挑発と区別されない。
理解されえぬ兵士は、仄か、笑う。

「あんたのマリオネットになっても、楽なだけだ」
「そうか、……臆病者を訂正しよう」

過小評価を素直に詫びると、兵士からは笑みが消えた。

「あんたを敵にするのは面倒だろうな」
「かと言って、仕える気はないのだろう」

笑みで揺らす彼の心は面白い。
さらさらと、ちくちくと、いくらも変わる音色には、誠実であろうという姿勢が見えた。
それこそマリオネットなら容易く手に入れられる。
早く敵対して、屈服させられれば善い考え、皇帝は、彼への理解を放棄した。




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