コスモス×セシル

薄く水の張る地面を歩く。聖域に当たり前のようにあるこの水が、そういえばどこでなくなっているのかセシルは知らない。
ほとんど障害物のないここの中心に、女神は慎ましく座っている。
コスモスを眺めるように立っているセシルに気付いて、コスモスは唇を緩やかに持ち上げた。

「あなたは、いつもその位置にいますね」
「僕がこれ以上近付くのは、身分違いも甚だしいことです」

光そのものを直視するみたいにセシルの目が細められた。
どれほど求めていても縮めてはいけない距離が、コスモスとセシルの間には、確かにある。
コスモスはそっと瞼をおろした。

「私からは近付けと言えないのを分かっていてそう言うのですから、ひどいひと」

切なげに小さく笑ったのは、お互いだった。



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