コスモス×カイン

ふと思う。
自分はなぜここにいるのだろうかと。
呼ばれたからここに存在する。
存在を許されたから、ここにいることができる。
単純な理由はひどく心地好くて、カインはゆったりと眼を細めた。
ここはぬるま湯に浸かっているような感覚に似ている。
温かな水は冷たい身体にとっては本当に温かく感じられるから。

「…そう思うのは怠惰か?」
「……そうかもしれませんね」
「俺を、なぜ秩序に呼んだ?」
「…あなたのこころは」

あなたの世界で誰よりも美しかった。
そう言って、秩序の女神は微苦笑する。
何が秩序だ。
内心で毒づいたつもりだったけれど、それは無意識に音になってしまっていたようだ。
すみませんと澄んだ声で謝罪されれば、まるでこちらが悪者のよう。
いや、元から悪も善もないのだろう。
秩序と混沌が何も変わらないように。

「カイン」
「…なんだ」
「あなたは、確かにここにいます」

それは変わらない事実。
揺らぐ世界のなかで、あなたは確かにここにいる。
長い睫毛を震わせながら語る女神はなによりも美しく思えた。
剥き出しの肩に触れると、無骨な手を白く細い手がしっかりと握る。

「…私は、あなたを救えません。けれど…けれど、カイン」

私はあなたの存在を認めることができます。
わずかに潤んだ青色が、確かにこちらを向いた。



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