プリッシュ×ガーランド

王子様なんていない


「おっさんって意外と優しいよな」
「………」

侮辱にも値する言葉を軽々しく口にする小娘を肩に抱え、ガーランドはなるべく振動を与えないように歩き続けた。
この装備だ、どうしても金属の摩擦による揺れが生じる。しかし敵の前で武装を解くなど愚かしい事この上無い。
そこまで考え、肩を落とした。ずり落ちそうになったプリッシュは腕の力で支えた。

何故このような事を考えねばならんのか。

散らしようの無い憤りは溜め息で誤魔化し、時々耳元で痛みを噛み締める声に眉を寄せる。
小柄な身体にいくつも刻まれた傷。察するにこれは皇帝の罠によるものだろう。この冒険好きな小娘が好奇心で飛び込んだ結果に嘆息しつつ、尻拭いに合う己の不運を嘆いた。

「いい加減身の程をわきまえんか」
「うー…」

呻き声はガーランドの背を叩く振動とともに上がった。痛くは無いがプリッシュの怪我に障る、そう思い、やめんかと一声かける。
ぶぅ、膨れっ面が破裂した。
やれ大人しくなったと思いきや、らしくない声色での呟きが届く。

「…俺の冒険は大切なんだよ」
「知らぬわ」

人の思考を読み取る能力は残念ながら授かっていない。知った所でどうにかなるものでも無し、ガーランドはわらった。
プリッシュは顔を上げ、ガーランドの鎧に覆われた冷たい肩口へ唇を落とす。想いが共に流れて行けば良いのにと願いながら。

「俺があんたの王子様なら良かったのに」

そんな捨て台詞を吐き出すと、再度くてんと力を抜いてガーランドに凭れた。
怪我人は何処までも無謀だ。
連れ出して、それからどうしようというのだ、この身を。

「愚かなことよ…」

遥か昔に置いてきた感情の名を思い返しながら、プリッシュの身体をそっと抱え直した。



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