プリッシュ×暗闇の雲

暗闇の雲は、とうとう、恐怖を理解してしまった。
故に、全速力で逃げている。追っ手から。
切り立つ崖の隙間を縫うようにして逃げている。

「まーてーぇえええ!!」

追っ手はプリッシュだ。俊敏な身のこなしを存分に発揮して、岩場を移りながら暗闇の雲を捉えている。
雲はすっかり怯えた様子の触手たちを前に抱きながら必死だった。

プリッシュは、腹ペコらしい。
暗闇の雲を見るなり、触手を凝視して、涎を垂らし出したのだった。そして蛇皮こんがりバターしょうゆと、よく分からない呪文を呟きながら襲いかかってきた。
身の危険を感じた暗闇の雲は素早く宙に逃れたが、挑戦的に笑った口元を手の甲でぬぐったプリッシュに、逃すつもりはなかったらしい。鬼ごっこが開始された。
空間転移を使おうにも、逃げながらでは難しい。
どうにか、どうにかせねばと、暗闇の雲は予期しなかったピンチに信じられないほど動揺していた。波動砲を用意する間も惜しいのだ。
プリッシュの気が逸らされるものはなんだろうと考えるうちに、秩序の聖域に突入してしまうのは、あと十分後の話。



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