プリッシュ×カイン
「辛気くっせぇツラ」
「…見えてないだろ」
見上げた褐色の微笑みに、カインはため息をつく。
普段は聖域にこもっている彼女を連れだしたのは、このにっこりと微笑んでいる張本人様の提案からだ。
聖域近くの小高い丘の上、広がる湖を見ながらプリッシュはにこにこと笑いながら言ってのけた。
彼女の口が悪いのはいつものこと。
しかし、兜で隠された顔を指摘されたカインは少々不満げに返す。
いきなり背後に立ったかと思えばこのセリフ。
聞き捨てならんと槍を杖代わりに立ちあがれば、今度はプリッシュが彼を見上げた。
「わかんだよ!見えなくてもな」
ニヤリと笑う少女の得意げな顔といったら。
ため息をついて、カインは竜顔のそれを外した。
はらりと視界に落ちた金糸をかき上げると、視界に広がるのは湖の輝きと少女の笑顔。
「辛気臭いか?」
負けじと笑ってやれば、プリッシュは意外そうに眼を見開く。
しかし、すぐにそれは晴れやかな笑顔に変わった。
「おう!」
「……そうか」
無理矢理つくった笑顔を苦笑に変えて、カインはため息をつく。
正直、めったに笑ない自分が笑顔を振りまくのは慣れない。
「お前には敵いそうにないな」
「なめんな!」
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