ガブラス×暗闇の雲
ガブラスの刃は暗闇の雲に刺さらなかった。
ガブラスの涙は暗闇の雲に降り注いだ。
暗闇の雲は自分の首の横に刺さった刃をちらりと見てから、覆いかぶさるガブラスを見た。
後から後から降る生暖かな涙は、唇を濡らして塩辛い。
「化け物め、魔性め……!」
嗚咽の代わりに呪詛を吐く。
自らを憎む代わりに世界を呪う。
柔らかく沈み込む男の心が耐えられなかったのは、自分の誇りと優しさを拒絶するように見えた世界。
暗闇の雲は腕を伸ばして、指先で男の涙を拭ってやる。後から後から零れても、その分だけ拭ってやる。
いつか抱きしめてやりたいと思うのに、男がそれを、許してくれない。
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