ガブラス×セシル
目の奥がじりじりする。
泣きたいのに理由が見つけられない時はいつもこうだった。
知っていなければならないはずの『理由』をどこに落として来たのだろう。セシルの中に必ずあるはずなのに、見つけられた試しがない。
「そんなものを持っていたところで、ここでは何の役にも立たん」
だから少し不安だ、とセシルが零すと、ガブラスははっきりと言い切った。
そう言うガブラスは…おそらくだが…記憶を持っている人間だとセシルは思っている。でなければ、ガブラスがセシルを見て、あそこまで羨み、憎む視線を向けるはずがない。
しかし彼が覚えているのはあくまでも彼の記憶なので、セシルについてガブラスが何を知っているわけでもないだろう。
だからセシルはガブラスを覚えている癖にと責める気にはなれなかった。覚えている人間が役に立たないと言うなら、そうなのかもしれないと思っておく。
セシルは立ち上がって、剣を握る。
「うん。でも、もやもやするからちょっと付き合ってよ」
「いいだろう」
甘えも慰めもない、ガブラスとのこの関係がセシルは好きだった。
自分に、自分達に一番合っているのは剣を交えることなのだと、分からせてくれるから。
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