エクスデス×ガーランド

爪痕


居心地の良い場所など求めてはいないし、必要ともしていない。また、存在しているとも思っていなかった。
それがどうだ、次元城の一角でのんびり日光浴。
混沌の神に仕える者としてこんなに滑稽な姿は他に無い。笑い種だろう。
壁に背を預け、一時の休息。傍らには相棒であり魂を賭けた巨大な変形剣。反対側には、恐らく通り掛かった者がいたら二度、三度と見直すだろう、エクスデスが仁王立ちをしていた。
幻に等しい太陽の直射を、丁度良い場所でガーランドから遮っている。
彼からしてみたら、ただ気に入りの場所がそこであり、ガーランドが感じた配慮など微塵も考えていないのかもしれない。
しかしこれはどうやら、甘やかされている。
無の象徴ともいえるエクスデスが、笑えるだろう、自分を甘やかしているのだ。可笑しくて、自分以上に滑稽で、ガーランドは仮面の奥で笑った。

「…何を笑っておる」
「ああ、いや…」

まさか感付かれるとは思っていなかった為に、突然の指摘に口篭る。首を横に振るだけが精一杯だ。とはいえ、此方に一瞥すら与えてこないエクスデスの視界に映る事は無かったが。

「眠らぬのか」
「…生憎、必要としない身体だ」

労るような声色では無い。無機質な言葉は、それでもガーランドの胸の内をじんわりと侵食していく。
その心地好さに、愚かだと思いながら、背徳の心に酔いたかった。

偽りの太陽が熱を上げる度、エクスデスの後ろ姿が眩しくて瞼を伏せる。
疲労を知らない身体だが、精神は少し疲れているのだろうか。
今だけ、そう、今だけだ。
待ち受けているのは残酷な幻想。
一時の休息を終えたらまた身を委ねなければならないのだ。
ならばせめて、今だけは。

「眠れ、愚か者よ」

影は偽りの優しさを演じ、真実を無へと吸い込ませた。



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