エクスデス×皇帝

「こんな場所で何をしている」
エクスデスの姿を探して皇帝は次元城まで赴いたが、いるはずの主は見当たらず、移ろう狭間を抜けて気配を辿ると道もない青々と茂る森のなかで、その人を皇帝はやっと見つけた。
果たして『人』であるのか、そう形容することに笑いが込み上げたが、これは自嘲だ。

「この世界の存在こそ無に等しい」
ああ、また会話にならない。皇帝は舌打ちする。
エクスデスは何処か遠くを見つめるように大樹の前にたたずんでいた。この場所はエクスデスの記憶の断片で形成されたものなのだろうか。風もなく、生き物もいない森は酷く静かで不気味とさえ思う。

「この場所は貴様の何だ?」
まともな返答など期待していなかったが、エクスデスにそう問い掛けると彼はようやくこちらの存在に気付いたように振り返り、ぽつりと洩らした。

「お前もまだ我を忘れていない時分であったのなら、この場所の忌まわしき意味も事柄も理解できただろうが」
察するに感傷に浸っているのだ、この者は。ということはここは故郷、生まれた場所とでも言うのだろうか。
皇帝は紡がれた言葉の意味を租借しながら次を待っ。別に大した内容でもないこの時間を過ごすのは怠惰だったが、しかし、

「…貴様に言葉が届く内に、この世界を無に返す」
不穏に笑いながらエクスデスはそう言い残して狭間に消えるように姿を消した。
話を聞かないのはどちらか。貴様にはもう言葉が届かないというのに。
間もなくして世界の終わりが始まった。



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