エクスデス×暗闇の雲

*バッツ×暗闇の雲の続き

バッツの手によって仕立てられた、花香る可愛らしい髪型で、暗闇の雲は機嫌よく空を飛んでいた。
なるほど、こんなときに鼻歌をするのかと思ったが、歌える歌を暗闇の雲は持っていない。
次元城の外で佇んでいるエクスデスに、何か知らないか聞いてみようと、暗闇の雲は彼の前に降り立った。

「エクスデス、何かうたを教えてくれんか」

エクスデスは驚いた様子もなく、暗闇の雲を迎えた。
同じく無という言葉を信奉する魔物同士であるが、その内容はあまりにかけ離れている二人だ。最初は故になんだお前は、とお互い警戒の体だったが、語る無が己とまったくの異質であることが分かってからはそういうものとしている。
完全に真逆とは言い切れないが、お互いの所属する無は違う。真塗りの黒、混濁の黒。対象の闇、欲求の闇。

「呪詛の、あるいは恨みを語り継ぐものだとかであればすぐに伝えられるが」
「いやじゃ。もっとさわやかなのがいい」

エクスデスの親切を、暗闇の雲は却下した。
しかし怒り出すかと思いきや、エクスデスは飾られた雲の髪に手を伸ばしたのだった。
そうして一本、白い花を引き抜く。

「悪意の無い美は私には感じ取れん」

続いて黄色い花を。
暗闇の雲は、特に止めようとは思わなかった。

「さわやかな悪意のうたはないのか」

エクスデスがいつものように、くぐもった嘲るような低い笑い声を立てる。

「恋の歌ならば、多少はさわやかであろうな」

暗闇の雲は素直にエクスデスの言うことを飲み込んだ。そうなのかもしれない。あまり興味の無いことなので、真相はなんでもいい。さわやかな悪意、恋。それでもいい。
エクスデスの硬い、何で出来ているのかよく分からない指が、今度は桃色を引き抜く。

「お前はこちらのが美しかろう」

紫まで取られて、現れるのはいつもの魔物。銀の髪を編んだ、女の姿の。
エクスデスはついでに、その編んだ髪までほどいてしまう。
暗闇の雲は抵抗しなかった。かなしいだとかそういうものに縁がない。エクスデスの方が、そういうものは得意だ。
だから、エクスデスの手の中で、さらさらと花たちが灰になっていった。朽ちて、落ちていった。
うたが必要なくなったな、と暗闇の雲は自分の頭に手をやってそう思った。



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