エクスデス×カイン

秩序にいながらも混沌を望んだ騎士がいた。
己の命よりも重いのであろう誇りをかなぐり捨てて、その騎士は竜顔のまま仲間と呼んだ者に槍をつきたてる。
隙だらけの背後に得物を突き立ててるのもおもしろい。
しかし、それよりもおもしろいことがあることをエクスデスは知っていた。

「この世界でも仲間を手にかけるか?」
「…っ」

鎧の奥でくつくつと笑えば、竜顔がこちらを向いた。
その唇は真一文字に結ばれている。
隠された素顔は悔しさに苦く歪んでいるのだろう。

「…興味あるな」

ガシャリと鎧を鳴らしながらただそこに突っ立ているカインに歩み寄る。
正面に立ってやれば、僅かに息をのむ音が聞こえた。
それでも彼の足は根づいたように動かない。
ゆったりと焦らすように兜に手をかける。
いよいよ結ばれた口が開かれた瞬間に、エクスデスはその兜を乱暴に取り払った。
からんと間抜けな音をたてて地に転がったそれを横目に、ガーランドはカインの揺らぐ青を見る。

「迷っているのか?」

尋ねれば、彼は唇を噛んで俯いてしまった。
かたく握りしめられた拳はわずかに震えている。

「すべて忘れればいい」

無はお前の苦しみさえ消すだろうから。



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