皇帝×ティファ

死人のように冷たい指先が彼女の体温までも奪おうとその身に触れた。
その先からぞくぞくと悪寒にも似たものが駆け抜け、これから起こる何か不吉なことを予感させる。

「私をどうする気…?」
「愚問だな。」

薄い唇を僅かに歪ませて、笑う。
本能的に危険を察知したらしい早鐘を打つ心臓と、頭の奥から聞こえてくる耳鳴りに耳を傾けながらティファはこの状況を打破する術を思考する。
男はその様子を、さも愉快そうに嘲笑しながら耳元まで顔を寄せ囁いた。

「支配するのだ、貴様を。」

その旋律に体が強張る。
虚ろよりも恐ろしい、悪意を宿した瞳に貫かれ震える。
くつくつ低い音で笑う顔はティファの目には悪魔のように見えたに違いなく、恐怖で染まった体はもう動かない。
逃げられないとほんの一瞬でも思ってしまった時点で心ごと掌握されたに等しかった。
それを満足げに見下ろして、男は彼女の唇に指を滑らせる。

彼の者はその名に相応しき、皇帝であった。



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