セシル×ティファ
石柱と石畳で囲まれた空間で彼女と隣り合って腰掛ける。しんとした空気は穏やかに流動し、時間という概念を忘れてしまいそうなほどで。
ふと思いつきで、少し寒いね、と取ってつけた理由ですぐ傍にあった彼女の手を包み込んでみた。
そう?と特に抵抗する様子もなく手を僕に預けたまま彼女は小首を傾げる。
グローブの上からでは残念ながら体温を感じ取ることは出来ないけれど、その感触だけで不思議と安心する。(ああ、僕が安心したって意味なんてないのに)
「寒くなったら遠慮なく言っていいよ。ご覧の通り、毛布の代わりもあるから。」
「ふふ、ありがとう。でも大丈夫。」
おどけたように布を抓んではためかせ彼女の顔が優しく綻ぶのを見て、僕の顔も思わず、ふにゃり。
「セシルは優しいから、つい甘えちゃいそうになるわ。」
「いつも頑張ってるんだからいいじゃないか、偶には。」
「だめよ、そう言っていつも甘えちゃうんだから。」
「いつも?」
いつも。彼女の言ういつもとは、いつもという意味だろうか?
だとしたら一体彼女はいつ僕に甘えたと言うのだろう。
それを問うたら彼女は少し恥ずかしそうに、今も甘えてるわと呟いた。
なんてことだろう、彼女は甘えるの正しい意味を知らないみたいだ!
ならば僕が教えてあげなければと、とりあえず「僕の胸を使って泣いていいよ」と両腕を広げてアピールするところから始めたのだけど物凄く拒否された穏やかな、昼下がり。
(どうやら僕のベクトルは彼女の考えにそぐわない)
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