フリオニール×ユウナ

慈愛

「お疲れ」
差し出されたカップに口を付ける。甘い香りが口いっぱいに広がり、喉を通る熱さが心地よく、疲れた身体を癒してくれるようだった。
「さっきは大変だったな」
フリオニールも疲れた笑みを浮かべ、ユウナの向かいに腰掛けた。
つい先程。偵察や収集に行ってきた探索チームが戻ってきた。しかし途中でイミテーションに不意打たれたらしく、帰ってきた時彼らは傷だらけでそれは惨いものだった。
幸い、傷の深さの割りには大した怪我ではなく命に別状もなかったのだが、それを治すために白魔法を使えるものが駆り出された。のは当然としても、その時ベースキャンプに残っていた白魔法要員がユウナとフリオニールの二人だけだったからさあ大変。探索に行っていた者の数が多く、全員分の傷を癒したあとには魔力はほぼすっからかん。
結果として、今こうして休ませて貰っているわけなのだが。
ほう、と吐く息は白い。
疲れた、とは言ったもののこの程度で皆の傷を癒せるのなら安いものだ。
「フリオニールも白魔法が使えるんだね」
「ああ、元の世界で世話になった人が白魔導師でな。その人みたいになりたくて」
少し照れくさそうにフリオニールは語る。とても素晴らしい魔導士だったのだろう。誇らしげな表情からそれがありありと伝わってくる。
「わたしは、みんなの希望になりたくて」
大好きな世界を、大好きな人たちを守りたくて。それは『シン』を倒すだけじゃなく、一歩一歩の積み重ね、出会った一人一人のためになりたくて。
「だから本当は、身体だけでなく、心も癒してあげられたらいいんだけど」
「……それは、もう出来てるんじゃないか」
呟かれた言葉にユウナはきょとんと首を傾げた。
ふいっとフリオニールの顔が逸らされる。その頬はちょっとだけ赤くなっていた。



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