ユウナ×暗闇の雲
抱きしめるようにして杖を握った少女が、きりりと暗闇の雲を睨みつけ、次の瞬間深々と礼をした。
「お願いします!私の召喚獣になって下さい!!」
突拍子もないにもほどがある。
さすがの暗闇の雲も、これには絶句した。
再び上げられたユウナの表情は、先ほどと変わることなく真剣だ。本気の本気らしい。
暗闇の雲は呆れた声の出し方を引っ張り出して実践する。
「何ふざけたことをぬかしおるか」
「ふざけてません!」
「わしとお前は敵同士だぞ」
「でも雲さんには光と闇のバランスの方が大事だと聞きました!イミテーションが溢れかえる今、その偏ったバランスを正しているのは私たちです。つまり雲さんにも、こちら側につく理由があります!」
雲さんと来たもんだ。
ユウナは頑固そうな目をしてしっかりとこちらを見てくる。
暗闇の雲も、小娘なんぞに遣われるわけにはいかないので、ふん、と馬鹿にした笑みを浮かべる。
「だとしても、わし、人間に遣われるのイヤじゃもん、遣うのは良いが」
「そんなの、考え方一つです!雲さんが私に召喚させてると思ってください!」
「貴様意外とめちゃくちゃじゃな……」
暗闇の雲はこのげんなりとした気持ちが自分に馴染んでいくのを感じた。
ユウナに引く気配はない。
今度は誘惑のつもりなのか、おいしいもの食べさせてやるだとか、たまにはきちんと破壊衝動が発散できるよう光の戦士と戦わせてやるだとか言い出している。
面倒になってきた暗闇の雲は、さっさと霧に散じて逃げてしまおうと決めた。
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