セシル×ユウナ

兄妹

なんだろう。
先程から感じる視線に、どうしたものかとセシルは内心で苦笑した。視線の主は分かって

いる。ユウナだ。というかこの場にはセシルとユウナの二人しかいないので、そうでなか

ったら困る。
何か気になることでもあるのだろうか。それとも何かやらかしたっけ?
記憶を漁ってみるが、特にこれといって思い当たる節はない。
そしてそうしている間も、ユウナの視線はずっとセシルに向けられている。が、あちらか

ら話しかけてくる気配はなし。
……仕方ないなあ。
「ユウナ、何か用かい?」
思い切って話しかけてみた。
するとユウナは声をかけられたことに一瞬驚いた顔をして、それから状況を把握して恥ず

かしそうに俯いた。
「えっと、その、大したことじゃなくて」
「いいよ。気になることがあるなら、何でも言って欲しいな」
出来るだけ優しい調子でそう語りかける。よほど言いにくいことなのかもしれない。
初めのうちは躊躇していた様子のユウナだったが、暫くして意を決したかのように口を開

いた。その瞳は真っ直ぐセシルへ向けられていて。
「どちらかと言えば、お姉さんかな、って」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が漏れてしまった。
……えっと、つまりどういうことだろう。まさか、いやまさかとは思うが、セシルの性別

を誤解しているのでは、いやいや、確かに女顔だの綺麗だの言われたことはあるが、体格

や声はきちんと成人男性のそれであるつもりだ。そもそも、これまで一緒に戦ってきて生

活してきたのというのに、万が一
にもそんなことは
「あ、わたし、お兄さんとお姉さんがいるんですよ。それでどっちに似てるかなって考え

てて」
そんなセシルを見かねてか、ユウナは慌てて補足の言葉を足した。
ああ、なるほど。ようやく理解すると同時にほっと息を吐く。あらぬ誤解はなかったわけ

だ。
「お姉さんに似てるんだ?」
「はい。厳しいけど優しくて、とっても頼りがいのある大好きなお姉さんなんです」
男性の方と比べるなんて失礼なんですけど。とユウナはどこか楽しそうに微笑んだ。
「そっか。そんな人に似てるなんて光栄だよ」
セシルも釣られて微笑む。きっとユウナの言うとおり素晴らしい人なのだろう。せめてこ

の世界では、その人の分まで彼女を守ろうと、そう思った。
「そういえば僕も、妹みたいな娘がいたなあ。召喚士の娘と白魔導師の娘なんだけどね」
「へぇ! それはいつか会ってみたいです」
「うん。きっと仲良くなれると思うよ」
そう言うと、ユウナはとても嬉しそうに笑った。その笑顔は非常に愛らしく、愛おしくて

――
「……あとでティーダと話さなきゃな」
また一人、舅が増えたとか何とか。



prev | next


「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -