スコール×ガーランド
2012/12/10 22:47


純情×純情


ガンブレードの刀身が煌めく。
火花を散らす刃先は零れを知らず、凪ぎ払った腕の力は幼い。しかしその身軽さを纏う少年は絶え間無い剣技を繰り出していた。
それら全てを受け止め、流し、突っつく程度の反撃をしてみせるガーランドはお遊び半分だ。
勿論その態度にスコールは気付いていたし、青二才の如く苛ついていた。
くるりと一回転、飛び出す足癖の悪さにガーランドは嗤う。片手で受け、両手で握り締め、力の限り振り回し投げ捨てる。踏ん張っていた足元は瓦礫と化した。

「くそ…っ!」

壁に激突する前に体勢を整えたスコールは、仲が良い壁に別れを告げ反動をつけて彼の下へと帰還する。
崩れそうな神殿をかろうじて支える柱は脆く、みしりと嫌な音を響かせた。

「本気にっ、なれ!」
「ならばしてみせるが良い!」

牽制の炎はガーランドの拳ひと振りで虚空へ溶け、迫るガンブレードを身の丈程もある変形剣で弾く。
衝撃に痺れたのは互いの腕。
震えたのはどちらの心か。
存在を許された神殿は紛れも無く二人の逢瀬の場であり、禁忌に等しい感情を重ねるには最良の空間だった。
と思っているのは勿論スコールだけで、ガーランドはただ単に闘争を楽しんでいるだけである。
禁断という響きに酔いやすいお年頃の感性を理解していないガーランドに危険が迫っていた。

「ぬぅ!?」

細い腕の何処にそんな力が、力自慢のガーランドが思わず瞠目してしまうほど、再度ぎりぎりと押し迫るスコールに驚愕を浮かべた。
遊びは終わりにしてやる、スコールの瞳が鈍く光る。

「くらえっ!!」

柄を握る手に力を込め、渾身の一撃とばかりに変形剣を打ち上げた。重力に従い落下してきたそれを蹴り飛ばし、受け止めたガーランドの隙をついて足を払う。

「ぐっ…!」

バランスを崩し、背を打ったガーランドを見下ろしたスコールはガンブレードの切っ先を向ける。肩で息を繰り返す獅子の必死さに笑いを堪え、まいった、と両手を上げた。

「子猫めが…」
「勝てば官軍、だ」

例え手を抜かれていようとも。
ガンブレードを投げ捨て、ガーランドの鎧兜を取り上げたスコールは、はっ、と熱い息を吐く。溶けるような、若き猛る想いに後押しされて兜をも投げ遣った。

「あんたを俺の物にしたい」
「ほざけ。まやかしに取り付かれおって」
「…これが幻想なのだとしたら、俺はその中であんたを抱くさ」
「…愚かな」

ガーランドの瞼に触れた唇は熱を帯び、やたらと熱く。まるで涙を誘導させるかのような優しさに吐き気を感じた。
人としての再生を望まず、けれど人として慈しもうとするスコールの包容力に、くらり、揺らいだのは確かな事実。




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