オニオンナイト×スコール
2012/12/10 22:44
題「賢者の制裁」
兜のてっぺんについた房飾りを揺らし、リズミカルに歩く少年。月明かりにその赤い鎧はよく映える。
ふと少年は立ち止まり、辺りを見回す。かすかに、声が聞こえたような気がしたのだ。耳をすませると、小さく呻くような声。
混沌の気配を感じない事を確認すると、フィールドのあちこちにそびえる大岩を縫うように、声のする方へ駆け出した。岩の後ろに回り込むとそこにいたのは、
「スコール!?」
かなり意外な人物だった。単独行動を好む彼の事だ、イミテーションの不意打ちでもくらったのかもしれない。頬には火傷の痕、足下には血だまりができている。それにしてもここまでの大怪我をするのは初めて見た。
オニオンナイトの姿を見ると、傷ついた青年はそれでも立ち上がろうと足に力をこめた。足下の血だまりが大きくなる。
「待ってよ!今ケアルガかポーションを…」
「いらない」
ぼそりと言葉を制し、青年は氷の魔法を唱えた。氷塊の向かう先は足に出来た大きな傷口。
少年があっけにとられている間に傷口は凍りつき、血は流れなくなった。いつのまにか具現化したガンブレードを支えにスコールは立ち上がる。
「行くぞ」
いつもなら頼もしいはずのその声が少し震えているのを聞くに及んで腹に据えかねた騎士は、
「っ!?」
スコールめがけて麻痺の魔法を放ち、無理やりその場に座らせる。そのままオニオンナイトは上位魔法の詠唱をはじめる。詠唱する合間に説教も忘れない。
「まったく、いつも言ってるでしょ?ポーションも持ってないのにイミテーションに突っ込んでいかないでよ!!…っと、ケアルガ」
「……すまん」
「あと傷口を氷で閉じるなんて後が大変なんだから!!まったく…はい、済んだよ」
「…なあ」
「なにさ」
「ホールドといてくれ」
「途中でイミテーションにでくわしても無茶しないって約束するならね。はい、エスナ」
帰ろう、と言って差し出された手を今度は素直に借りて、スコールは立ち上がる。それが何だか無性に嬉しく、小さな騎士は大きな房飾りの陰でそっと微笑んだ。
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