オニオンナイト×WOL
2012/12/07 22:01


title:そんな貴方が愛しい



『帰るべき場所や自分の名前すら、未だにわからない』



それが、彼が僕等に話した最初の不安だった。



コスモスの為に光りと共に戦い、コスモスが消えた後も託されたクリスタルを持つ僕等を守る為に、その悲しみや悔しさを完全に殺し、気を緩める事すら出来なかった彼が初めて漏らした、不安。



最期の最後になって…漸く聞けた彼の人らしい感情。



何て、不器用な人。オニオンナイトはそう感じていた。



単独行動も、厳しい言葉も、変わらない表情すらそうだ。

もっと上手く立ち回れば、誤解される事もないのに。



…何て不器用で、健気な人。



その健気さが、切ない。



「どうして、今まで話してくれなかったんですか?どうして、今まで独りで抱え込んでいたんですか?」



気付けば彼にそう訊ねていた。

声を掛ける時に引っ張った相手のマントを強く握り締めて、背の高い彼を見ようと精一杯顔を上げた。



「どうして…?」



自分ならきっと、そんなのは耐え切れない。



彼は眼を見開き、直ぐに平静に戻るとゆっくりと振り向いて身を屈めてくれた。



「オニオンナイト」



肩に置かれた手の温もりはわからなかったが、その声色は温かかった。



「私の成すべき事は記憶を取り戻す事ではなく…コスモスとの誓いを果たす事だ」



オニオンナイトはその言葉に眼を見開く。



「それに、私には君達がいる。記憶がなくとも…もう大丈夫だ」



そして彼はオニオンナイトの身体を抱き締めた。



温もりも、柔らかな匂いもない。



だが、それが一番彼らしくて。



「本当、不器用な人ですね」



だが、誰よりも優しい。



その時ウォーリアが小さく笑ったと、オニオンナイトは感じた。






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