ガーランド×オニオンナイト
2012/12/07 22:00
壁に叩きつけられ、為すすべなく崩れ落ちた。
オニオンはそれでも、痛む全身に誇りの血を回して、立ち上がる。酷くゆっくりだ。
ガーランドはその隙を狙って攻撃してこない。有難いことだが、屈辱でもある。オニオンを叩き付けた力も、彼の全力の十分の一程度なのだろう。
「まだ、立ち上がりおるか、小僧」
絶対的な優位がそうさせるのか、ガーランドの感嘆に皮肉は無いようだった。
オニオンは顔を拭って、砂埃の奥から、ガーランドを睨みつける。
悔しいが、確かにこれは逃げるべき戦いだ。それでも、嘲られるのは我慢ならない。
「死んだフリでもすれば良かった?」
強気に言って見せれば、期待とは違う反応が返ってきた。
「貴様は、いつもそうだな」
少し懐かしさを滲ませたような、敵意のない声。
いつもというほどガーランドと戦ったことのないはずのオニオンには、あまりピンと来ない反応だ。
戸惑うオニオンに対して、ガーランドは独り言のようなものを続ける。
「経験も、記憶も失われるくせに、その一つの宿命の中で、何度も成長する」
オニオンに、ガーランドの言っていることは理解できない。ただ、翻された彼の背にはもう戦意が無いことだけが確認できた。
そのまま、彼は遠ざかっていく。
訳の分からないオニオンは、それでも追いかけたいと思った。しかし、疲労の蓄積された体はそうはさせない。
ガーランドの表情が見たかった。そう言った彼の表情は、どんなものだったのだろう。
もし、オニオンに対する憧憬に、微笑んでいたのだとしたら、オニオンはこの先、彼と戦えなくなってしまう。それでも彼の顔が見たかった。
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