オニオンナイト×皇帝
2012/12/07 21:55
賢者と愚者
『世界のすべてをやるから仲間になれ』とは言わない。この子供はそんな陳腐な戯言に食い付くほど愚かではない。
「ああ、でも」
「ひとつだけ欲しいものあるんだ」
オニオンナイトは挑発するかのようにニヤリと笑う。子供は恐れを知らず手を伸ばす、無邪気に、純粋に、残酷で、捕らえた蝶を手のひらで握り締めるような、一瞬の好奇心をこの子供はまだ残している。
「君が欲しいな」
何でもくれるって言ったでしょ?
世界よりも、何よりも。
もっともっと面白そう。
小さな騎士は笑みを隠さない。
「生憎だが私は子守をするつもりもない」
茶番だった。
「…そうだね、僕も悪には屈するつもりはないさ」
カオスとコスモス、敵対する戦士として、それだけじゃないお互いの在り方は交わらない平行線にある。でも少なからず少年は暴君に惹かれていた。何故、そう在り続けるのか、彼は何を見ているのか、求めているのか。
疑問は身を阻み、好奇心は毒になる。
僕の知らない世界を欲しがる強欲な大人がここにいる。
「悪に屈するのではない、私にひれ伏すのだ」
そう、誓え。
そうすれば知らない世界を教えてやると、この悪い大人は囁くのだ。
少年とてそれが高い代償を払わなければいけない契約だということは知っている。
だから見返りはたっぷりと。
「君が僕のお姫様になって、キスしてくれる?」
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